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どちらも梅雨が明けてから読んだ本。 『シベリア流刑史』のほうは、もともと1960年代に中公新書として出たらしい。今世紀に入って発行された改訂版(いずみ橋書房、2009年刊)を酔流亭はそのころ知人から買って、しかし読まずに本棚に忘れていたのだった。 荒畑寒村翁の『ロシア革命運動の曙』は岩波新書として1960年に第1刷。上の写真の酔流亭蔵書は1974年、第15刷である。紙がいくらか変色している。 主に19世紀、ツァーリズム(ロシア帝政)と闘った革命家たちの群像である。 中でもひときわ光彩を放つのはチェルヌイシェフスキーだ。1828年生まれ。革命運動に関わった嫌疑で1862年に逮捕され、懲役7年、シベリアへの終身流刑を宣される。1889年に赦されるが、それまでの長い流刑生活によって心身を衰弱し、同年、脳溢血で亡くなった。 のちの世代のレーニンが深く敬慕し、同世代のマルクスとエンゲルスが最大の尊敬をもって評価した人物だ。 さて酔流亭がこの二冊の古本を引っ張り出して読んでみたのは、梅雨明けの炎暑をしのぐのにシベリアの極寒に思いを馳せたいという気味合いもないではないけれど、それよりブレイディみかこさんの新著『他者の靴を履く』を読んだことがきっかけとなった。 他人を押しのけて自分の利益だけ押し通すというのが普通考えられている利己主義だが、利己と利他とは実は相反するものではない。理性的に利害を計算すれば、人に尽くすことが自分にとってもいい結果をもたらす。『他者の靴を履く』で述べられているそうした考えは、かつてチェルヌイシェフスキーが獄中から若い世代に書き遺した小説『何をなすべきか』で展開した考えに近いものだ。 ブレイディさんはチェルヌイシェフスキーのことなんか書いてはいない。彼女は無政府主義に憧憬を持つからクロポトキンにはよく言及する。クロポトキンもロシアの革命家の例にもれず、チェルヌイシェフスキーを崇拝していた。 そこで、チェルヌイシェフスキーの思想は、クロポトキンを通じてブレイディさんに、本人はそれと気づいているかどうかは知らないが、伝わっているのではないか、というのが酔流亭の推測である。 『伝送便』の8月号は今日完成、発送も行なうが、『他者の靴を履く』の書評記事を酔流亭はそこに書いた。チェルヌイシェフスキーのこともすこしだけ触れておいた。
by suiryutei
| 2021-07-30 07:30
| 文学・書評
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Comments(2)
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このチェルヌイシェーフスキの「何をなすべきか」に冷や水を浴びせたのが、ドストエフスキーです。そんなにうまくいきますかね、と嫌味と皮肉を呈しています。
ところが、この二人は、ペテロパブロフ監獄の獄友であり、同じくシベリア送りにもなります。 出獄後、チェルヌイ氏は非転向進歩派、ドスト氏は転向反動派にわかれますが、このまえの内田樹さんのような単純な腑分けは通用しません。 チェルヌイのヒューマンな啓蒙思想は依然として有効ですが、ドストの暗い懐疑主義も多くの示唆に富んでいます。ドストが革命運動への「いじわる爺さん」として、たえず苦言を繰り返してきたのも、ロシアの青年層に身を誤らせたくない一心からだったのでしょう。 旧ソ連や現在の中国を見たら、チェルヌイの高邁な思想の一辺もなく、ドストの警告した権力者のおごりを見るだけですね。どうでしょうか。
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