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床屋に行ったところ、珍しく混んでいる。珍しくというのは、コロナ禍になって以来、たいていは空いているからだ。 今週に入って千葉県内も感染数が下がってきたのと、年度の切り替わりが近づいてきたからだろう。 順番を待っている間、待合に備え置きの雑誌を眺めることにした。雑誌が並ぶ棚には「不特定多数の人が来ますので消毒してください」と貼り紙してあるから、備え付けのアルコールで手指をシュッとやって、恐る恐る手にとったのは『週刊ポスト』。少し古くて、去年秋の日付である。 ぱらぱらとページをめくっていくと、『南風に乗る』という連載小説の作者が柳広司というのが目に留まった。この人は、やはり『週刊ポスト』にたしか『太平洋食堂』という小説を連載していて、それは大逆事件を扱った小説だという記憶がある。 すると『太平洋食堂』はすでに完結して、新しい連載なのであろう。 メガネを持ってこなかったから読むのが辛いのだが(メガネは備えてあったけれど「消毒して・・」の貼り紙を目にしたばかりでは不特定多数使用のメガネをかける勇気はなかった)、それでも行を追っていくと、沖縄が舞台の小説である。酔流亭が読んだ回は連載9回目となっていて、ときは1954年、瀬長亀次郎が沖縄から退去命令を受けた人民党員を匿ったとして逮捕され懲役2年の刑で入獄したところである。 ところが入獄してじき、その刑務所では受刑者たちの暴動が起きた。瀬長が煽動したというのではなく、逆に瀬長は囚人に頼られただけでなく、刑務所長からも調停を頼まれたらしい。そうして暴動を労働争議のようにして囚人たちの待遇改善をかちとったという。 これは面白そうな小説である。帰宅してから題名をグーグルで検索してみた。連載が開始されてまだ日が浅いせいか、情報があまり無い。 前の『太平洋食堂』も、大逆事件の犠牲者たちへの共感が湛えられた作品ではなかったろうか。通読していないので詳しくは知らないけれど。 週刊誌も時々は開いてみるものだ。
by suiryutei
| 2022-03-10 05:06
| 文学・書評
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