新人事制度 大阪での報告①~③
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今日から4月、新年度である。『伝送便』誌の4月号も昨日完成して発送を行なった。 ![]() 酔流亭はこの号には【通信・労働者文学】No.300に寄稿したのと同じ文章を転載させてもらった。ただ、【通信】には無かった小見出しをいくつか入れてある。 このブログの3月23日更新記事に載せたのと同じ文章ですが、改めて掲載します。 ![]() 二月一一日といえば、紀元節の復活に反対する者としてはそれと認めたくないのだが、世間では<建国記念の日>という名の祝日として通っている。しかし、この工場はその日も稼働していた。二十四時間稼働というから、日曜も祝日もないのである。新潟県の菓子メーカー〔三幸製菓〕の村上市にある工場で一一日深夜の午後十一時五〇分ごろ火災が起き、六人が亡くなった。 翌一二日夕刊が報じた時点で死亡が確認されたのは七三歳、七一歳、七〇歳、六八歳のいずれも女性四人。別に一人の遺体が見つかり、二〇代の男性従業員二人と連絡がとれなかった。数日中にその二人の死亡も確認された。初め不明だった遺体は、そのうちの一人である。
閉じたシャッター
工場の従業員は約五〇〇人。A~Gと七棟あるうち出火したF棟では<おかき>の詰め合わせなどを生産していた。火災が発生した時間帯には約三〇人が中にいた。午後十一時半から生産ラインは五〇分間の休憩に入り、その間に機械の清掃が行われる。亡くなった四人の女性は製造工程で働くのではなく機械の清掃を行うアルバイト従業員である。夜間の勤務時間は原則として午後九時半から二~三時間というから、勤務もそろそろ終わりに近いころに火災に遭遇してしまったわけだ。 それにしても寝静まっての出火ではないのに避難できなかったというのは、どういう状況だったのだろう。 「バチッという音がして真っ暗になり、煙が充満した。パニックになった」。 二月二一日更新の毎日新聞ウェブ記事が逃げ延びた女性清掃員の声を伝えている。出火してすぐ停電したのである。暗闇の中、何とか出入り口までたどり着いた。防火シャッターは閉じていたが脇の扉から外に出られ、気づくと煙の煤でマスクは真っ黒になっていた。 <隣のE棟にいた六〇代女性はこう証言する。「火災報知機が鳴り停電した。休憩室のある二階から社員が懐中電灯を持って降りて来て『火事だ、避難した方がいい』と叫んだ。数人がまとまり、転ばないよう手探りでかすかに明かりが漏れる出入り口を目指した」。女性は非常口の位置を把握しておらず、社員がいなければ、どこへ逃げていいかわからなかったという。外に出ると、F棟内に真っ赤な炎が見えた。> 悲しみと怒り あの日、何があった 三幸製菓火災から1週間 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
避難訓練もされず
同工場では避難訓練は年二回おこなわれ、昨年九月も実施されていた。しかし亡くなった四人とも勤務と訓練の時間帯が合わず参加していないという。もっぱら深夜帯の出勤だったら、訓練が型どおりのものでしかなければそれに漏れてしまうだろう。避難訓練が行われていたのは正規雇用だけで、アルバイトは避難経路の説明さえ受けていなかったという取材もある(二月一六日朝日朝刊)。 高齢者の就労(しかも深夜労働)、安全衛生の軽視、ことに非正規雇用におけるそれ。働く者がこんにち置かれている過酷な状況を象徴するような火災である。この工場では一九八八~二〇一九年の三〇年間余に火災が八件もあり、うち七件は乾燥・焼き工程で菓子くずから発火したという。それだけに清掃作業は安全のため重要な仕事なわけなのに、それを担う人たちの安全には充分な配慮がされていなかった。
低価格の闇
暗合ということであろうか。火災が起きた翌日、二月一二日は土曜日だから朝日新聞朝刊には読書欄が載る。『物価とは何か』という本(渡辺勉著、講談社選書メチエ)への坂井豊貴氏の書評の中のこんな記述が目に留まった。 「・・原油が高騰すると、ガソリンなど石油関連商品は値上がりする。だが消費者は他の商品で節約する。例えば菓子を買い控える。このとき菓子メーカーは、一層の買い控えを恐れ、値上げできない。むしろ菓子への需要低下は値下げの圧力を生む。・・」 ネットで調べてみたら三幸製菓の人気商品<雪の宿サラダ>は二四枚入りが十二セット二三五一円で買える(別に送料が五五〇円)。つまり二四枚入り一袋が二〇〇円しないのである。スーパーの菓子売り場にはもっと安い定価の菓子も並ぶ。 あの書評が書かれたときより原油高騰はこんにち切迫している。ところが賃金や年金は上がらない。年金なんかは下がった。すると坂井氏が書くように菓子などは一層の値下げ圧力にさらされる。それは人件費や安全衛生への手抜きにしわ寄せされざるをえないだろう。暗澹たる思いになる。
我が生家も菓子屋
私の生家は菓子の小売業をやっていた。父親が復員して始めたので戦後まもなくからである。JR中央線国分寺駅の北口から歩いて七~八分、商店街がそろそろ寂しくなってくるあたりに店を構えていた。食パンや菓子パンは大手の製パン会社、初めは第一パン、それからかなり長くヤマザキ、一九七七年に廃業するまでの数年は木村屋と契約していたが、煎餅とかチョコレートなど菓子類は問屋から一括して仕入れていた。〔三幸製菓〕の創業は一九六二年、米菓では亀田に次ぐ業界二位のメーカーだから、我が家で売っていた煎餅にも〔三幸製菓〕のものがあったに違いない。そんな自分の生い立ちをふり返るにつけ、あの火災を他人事に思えない。火事の二日後、私のブログに匿名のこんな書き込みがあった。同感する。 <三幸製菓の『雪の宿』の姉妹品に、『雪の宿黒糖みるく味』というのがあって、めったにスーパーで見かけないんですが、沖縄産の黒糖を使ったまろやかな味で最高に美味しいですし、季節商品かもしれませんが、『雪の宿チップスモンブラン風味』は、栗風味かりん糖みたいな感じで一風変わった凝った美味しさでした。安くておいしいのでワーキングプア―にとってはありがたい存在ですが、それが労働者の低賃金や安全対策の手薄に繋がっているかもしれないことや今回の火災事故を思うと複雑な気持ちになります。>
by suiryutei
| 2022-04-01 08:27
| ニュース・評論
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Comments(2)
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