新人事制度 大阪での報告①~③
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【いてんぜ通信】22年夏号に寄稿した文章です。6000字弱あるので一回の更新記事としては少し長いですが、まとめて読んでほしいので全文をUPします。 ![]() アゾフ連隊
戦火のウクライナからの報道に、4月半ば頃から「アゾフ連隊」というのをにわかに目にし耳にするようになった。 それまでメディアではあまり出てきていなかったその名が大手のメディアにも登場したのは、私が見たかぎりでは4月12日だ。要衝マリウポリを巡る攻防でロシア軍が毒物を使ったと、そのアゾフ連隊から発信があったのである。 「ロシア軍がドローンを使って上空から毒物を投下した」(11日、アゾフ連隊SNS発信) アゾフ連隊「ロシア軍が毒物を投下」主張 “化学兵器”可能性は…「制圧作戦では有効」専門家の指摘も(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース ところが、そういう情報ならいつもは飛びついてロシア非難をくり出すはずのアメリカが冷淡だった。 「現時点では確認できず、状況を注視する」(同日、アメリカ国防総省のカービー報道官) 【解説】ロシア軍がマリウポリで“毒物”使用か 兵士や民間人に呼吸困難などの症状も(日テレNEWS) - Yahoo!ニュース それから今日(4月30日)まで、この件についての続報はない。つまりロシア軍がそのとき毒物を使ったという事実は確認できなかったのである。アゾフ連隊からの発信はウソだったのだ。アメリカ国防総省が初めから冷淡だったのは、これは信用できないと思ったからに違いない。もし毒物(化学兵器)が本当に使われたとしたら、それはNATOの本格的軍事介入の契機となって世界大戦→核戦争へとエスカレートする危険がある。発信した側はそうした事態を望んだのだろうか。 アゾフ連隊というのは、そういう危ないことをやる集団だということだ。それは国際的常識であるようで、現に日本の公安調査庁のホームページにさえアゾフ連隊はネオナチと記載されていたという。 いま過去形で書き、伝聞として書いたのは、4月以降、同HPからその記述が消えたと聞いたからである。今や自分の目で確認することはできないから、「そう書いてあったよ」という話を信じて論を進める。 この戦争でウクライナ政府全面加担を決めた日本政府は、その戦争協力体制にとって都合の悪い事実は消してしまいたいのであろう。 そうして、4月11日ごろロシア軍が毒物を使ったという、今となっては誤報とわかったニュースについて日本のマスメディアは「あれは間違った報道でした」とはっきり言うことをしない。あやふやにしている。だから先に触れたYahoo!ニュースが消去もされないでネット上に残ったままだ。それを通じて「野蛮なロシアは何をやるかわからない」というイメージだけはどんどん拡散されていくから、「あのニュース、ウクライナ軍の一員であるアゾフ連隊がまき散らした嘘だったんだね」とはっきり認識している人はそう多くないのではなかろうか。大新聞紙上での「専門家」のコメントや、あるいはメーデーに向けた労組や左翼党派のチラシにさえ、化学兵器がすでに使用されたかのような記述が散見されるのだから。 私はこの戦争でロシアの肩を持つつもりはさらさらない。ロシア軍がやっていることは野蛮だ。ロシア人ではなくロシア軍が野蛮なのだ。戦争がそもそも野蛮な行為だからだ。 だが、今度の毒物云々に明らかなように、プロパガンダは戦争となれば双方がやる。 ウクライナで民間人が大勢犠牲になっているのはウクライナのプロパガンダではなく事実である。悲惨な事態だ。ロシア軍はひどいことをしている。同時に、ゼレンスキー大統領が市民に武器をとれと呼びかけているのはどうかと思う。市民を軍隊が攻撃してはならないと国際法が定めているのは、市民は非戦闘員だからだ。ところが政治指導者が自国の市民に「銃をとれ」と呼びかけては、それは「我が国の市民は戦闘員だ」と宣言することである。国際法による保護対象から自国民を外してしまうことになる。 いや、攻め込まれた国の指導者に平常心を求めるのは酷であろう。しかし、自分は安全な場所にいながら他国人同士の殺し合いを煽るようなことをやってはいけない。アメリカ政府やNATOがそうだし、ゼレンスキーが3月に日本の国会でオンライン演説をしたとき、それを「貴国の人々が命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております」と称えた山東昭子・参院議長のような人のことも私は言っている。 戦争は、始めたほうが悪い。それははっきりしている。しかし今はとにかく停戦させることだ。そのためにこそ声を上げたい。
ネオナチをめぐって
先に触れたアゾフ連隊について、もう少し続ける。塩川伸明・東大名誉教授(専攻はロシア史、政治学)がご自身のホームページに4月17日に更新された論考『ウクライナ戦争・再論』によれば、最近は「アゾフ連隊がネオナチだというのはデマだ」という言説が広がっているとのことである。これについて塩川氏はこう述べている。 「かつて彼らが実際にナチのシンボルをつけていたことは、ロシア寄りの情報だけでなく、欧米寄りの情報でも確認されているが、もともと非公式な存在だった勢力がウクライナ内務省統制下の国民親衛隊に組み込まれるなかで性格を変容させ、ロシアの宣伝に対抗するためもあって、ナチを連想させるシンボルを外すようになった模様である。そうした変容を前提すれば、現時点のアゾフ連隊を<ネオナチ>というのは適切でないだろうが、かつてそういうものとして出発したことは否定しがたい。」 冷静な筆致であり、妥当な分析ではないかと思う。現在のアゾフ連隊をネオナチとただちに断定することは保留するとしても、そういうものであった尻尾はまだ引きずっていて、他国にいてウクライナの情勢には疎い私たちの目にも、その尻尾がちらりと見えたのがロシア軍毒物使用云々のデマということではなかったか。 ところが、政治の場では、やっつけたい相手があると、その相手の一面だけをつかまえ、誇張し、それが相手の全てだと塗りつぶしてしまうことがしばしば行なわれる。殺し合いが行なわれる戦争に比べればずっと牧歌的な話だが、自分自身の体験を書く。かつて新東京郵便局で働いていたときのことだ。1990年代、労組はまだ全逓であった。しかし労使協調路線にどんどん傾いていった頃のことである。それに批判を持つ仲間たちと<分会交流会>というものを作った。 本部路線支持の支部執行部に批判的な二つの分会が当初は軸になったが、その分会の役員が人事異動で他局に移動したりしていくうちに、実態は個人のつながりになっていった。それならそれで、分会の違いを越えて横断的につながろうという意味に変換して<分会交流会>という名称にこだわった。全逓本部が抛り捨ててしまった4.28反処分闘争の継続(被免職者との連帯)を求め、労使協調に反対した。 全逓組合員であれば誰も拒まない。だから新左翼党派の人も参加した。しかし、この人たちが分会交流会の中心にいたのではない。柱になったYさんは新東京郵便局が開局する前、全逓東京中郵の頃から社会党(当時)の活動家として知られていた。もう一人の柱であったSさんは全逓新東京支部の副支部長を新東京局開局以来やっていた。Sさんが副支部長を降りて本部批判の立場で全逓全国大会の代議員選挙に立候補したのが<分会交流会>が生まれるきっかけの一つであった。いずれにしても二人とも新左翼党派の人ではないことは支部執行部なら誰も承知のことである。 私はといえば、YさんSさんに看板になってもらって、裏方を引き受けたつもりである。月に一度はビラを発行した。初めは支部事務室の印刷機で刷っていたが、反組織集団に支部の印刷機は使わせないと執行部は言い出した。それで江東区の区民センターの印刷機を借りて印刷し、局に持ち込む。新東京局は人数がなにしろ多いので毎回1000枚は運んだから、けっこう重かった。新左翼党派の人がやったことといえば、月に一度の集まりに顔を出すことくらいだ。 しかるに、YさんもSさんも私も新左翼〇〇派ではないことを百も承知でいながら、支部執行部は<分会交流会>=新左翼〇〇派だとレッテルを貼ってきた。 レッテルを貼ればラクなのである。論争するより排除すればよいのだから。そして、こうした支部の対応に面して、それでも討議を求め続けていく粘り強さにおいて私たちは不充分であった。それが<分会交流会>を発展させるより先細りさせてしまった理由である。が、この総括は私の記憶がまだ確かで、当時ともに闘った仲間たちが元気なうちに、また改めて取り組みたいと思う。今はウクライナの状況に思いを戻そう。 前述のアゾフ連隊が保留を外して正真正銘のネオナチ集団だったとしても、アゾフ連隊がウクライナの全てではない。しかし、ロシア側のネオナチ連呼は、連呼するほどその点が曖昧になってきていないだろうか。私がかつての<分会交流会>=新左翼党派というレッテル貼りを思い出す所以だ。先に触れた塩川伸明氏の同じ論考によれば、ロシア国内では4月3日、RIAノーボスチという媒体にセルゲイツェフなる筆名の論者による論文が登場し、そこでは「最初のうちは少数のネオナチを倒せば多くのウクライナ人はロシアのもとに戻るだろうと予期していたが、実際にはウクライナ人の多数がナチ化していたことが分かったので、彼ら全体を浄化しなければならないと説かれている」とのことである。「浄化」なんていう恐ろしい言葉が本当に使われているのであろうか。全体に冷静な筆致の塩川氏にしてはこの記述には曖昧さが残る。しかし、(アイツらは)ファシストだとかネオナチだとかいう言葉を振りかざして軍事侵攻すれば、そんな無茶に対してファシズムやナチスとは無縁の人だって抵抗するのが当たり前で、すると抵抗されればされるほど、その相手がみんなナチに見えてくるという最悪の展開である。 ロシアの共産党はどうしているのであろうか。NATOの東方拡大がロシアを挑発し続けてきたのは事実だと私は思う。だが、そうであればこそ、そんな挑発に乗せられてロシアとウクライナとが殺しあうようなことはやめろ、それは帝国主義者が仕掛けた罠だと、プーチンを止めることこそが共産主義者がやらなければならないことである。 ところがロシア連邦共産党中央委員会委員長G・E・ジュガノフという人が3月15日に出した声明(ネットで読める)は、ナチスやファシズムという言葉の大判振る舞いだ。彼は第二次大戦の始まる前「ヨーロッパの<民主主義>側のナチズムに対する抵抗の欠如は、その後、壊滅的な世界大戦につながった」と例に引いて、ロシアの今回の侵攻を正当化するのである。だが、たとえナチスのドイツに対してであったにしても、ドイツが他国に軍事侵攻を開始する前にどこかの国が先にドイツに攻め込んだとしたら、それはファシズムに対する効果的な抵抗たりえただろうか。逆に、侵略に対する抵抗者であるとナチスをして振舞わせることによって反ファシズムの国際戦線を形成していく上で取返しのつかない混乱を与えただろう。 さすがにロシア連邦共産党の内部からも侵攻に反対する声が上がっているようである。共産主義の思想にシンパシーを持ち続けている私は、そこに希望を捨てないと言いたいところだ。
プーチンの大ロシア民族主義とレーニンの民族自決
ロシア軍がウクライナ侵攻に踏み切ったのは2月24日である。その直前、21日の夜にプーチンは約一時間のTV演説を行なっている。朝日新聞の【天声人語】は27日、そのプーチン演説に触れて批判をした。軍事侵攻を命じた人物の演説を批判するのは当然である。しかし、その紹介の仕方は誤解を招く不適切なものであった。【天声人語】のその箇所はこうだ。 「演説では『ウクライナはレーニンが作った』『ウクライナはわれわれの歴史の一部だ』と語った。外交の道を閉ざして軍事に頼った。国家の解体まで突き進むつもりなのか、誰にもわからない。」 コラムは字数が限られているから、【天声人語】執筆者は自分の頭の中では理解していても言葉を端折り過ぎたのであろう。この記述では「ウクライナはレーニンが作った」からわれわれのものだ、と、プーチンがレーニンに拠ってそう主張しているように読めてしまう。しかし、演説の翻訳を読むと、プーチンは逆の意味でレーニンの名を引っ張り出してきたのがわかる。 「レーニンと仲間は、歴史的にロシアの土地であるものを分離し、切断するという、ロシアにとって極めて過酷な方法でそれを行いました。」 「ソビエト・ウクライナはボルシェビキの政策の結果であり、正しくは<ウラジーミル・レーニンのウクライナ>と呼ぶことができます。彼はその創作者および建築家 でした。」 こうプーチンは述べたのである。つまりウクライナはもともとロシアの一部であったのにレーニンと仲間の共産主義者どもが「民族自決権」なんて七面倒くさいことを言い出したからおかしくなったのだ、と。 レーニンへのプーチンの敵意は、ツァーリ帝国以来の大ロシア民族主義という他ない。 私は去年、この【いてんぜ通信】の2021年冬号(12月1日発行)に『チェルヌイシェフスキーと石川啄木』という文章を載せてもらった。石川啄木のことは説明の必要がなかろう。チェルヌイシェフスキーとは、19世紀ロシアの革命的民主主義思想家である。ペンを執ってツァーリズムと闘った。その彼とレーニンとの思想的継承関係について、こう述べた。 「・・レーニンが分離の自由を含む民族自決権を徹底的に擁護したのは、チェルヌイシェフスキーの男女平等思想を抑圧民族と被抑圧民族の関係に応用したものであるように私は思う。」(【いてんぜ通信】第4号35ページ)。 レーニンの民族自決権擁護が完璧なものとは思わない。そもそも民族という概念の正確な定義は今日にいたってもできていないのではないか。そこに行き違いも生じることになる。問題は抑圧する側・抑圧される側のどちらに立つかだ。ツァーリズムに骨がらみであって社会主義ソビエト連邦の70年間を通じても克服できなかった大ロシア民族主義と、しかしそれと闘ってきたロシア革命的民主主義思想との相克がここには窺われるように思われる。 今これを書いているのは4月30日である。明日、5月1日はメーデーだ。午前中に日比谷野外音楽堂で開催される全労協主催の集会に参加した後、午後は<5.1反戦メーデー首相官邸前行動>に参加しようと思っている。東京東部労組が呼びかけるものだ。即時停戦、欧米や日本が武器を供与するのをやめること、人道支援、そして改憲を許さず憲法9条を国際貢献に活かすことなどが訴えられている。 とにかく戦争を止めるためにやれることは何でもやろう。 19世紀ロシアの巨星チェルヌイシェフスキー ~[いてんぜ通信]掲載② : 酔流亭日乗 (exblog.jp) 肌寒い中、熱気の反戦メーデー : 酔流亭日乗 (exblog.jp) ![]()
by suiryutei
| 2022-05-26 06:36
| ニュース・評論
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