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今日、8月9日は長崎の原爆忌だ。酔流亭が初めて原水禁世界大会に参加した1973年は、広島での集会、追悼行事を終えて6日の夜に夜行列車で広島を発ち、7日の朝、長崎に入ったのを思い出す。すべての日程が終わって、9日の夕方また夜行で東京に帰るのだが、長崎駅で電車が出るのを待っていると駅の待合室のTVでは甲子園の実況が始まっていた。 49年前だから、半世紀近くたつ。 あのころ世界は、ベトナム戦争ははっきりと終結の方向に向かっていた(パリ和平協定はその年の1月に成立)し、地球上から戦火は消えていくのではないかという希望を持てたものだ。それが今年は「第三次世界大戦はもう始まっている」(エマニュエル・トッドの新著の邦題)とさえ言われる有様である。まったくこの半世紀は何であったのか。 ![]() その「第三次大戦は始まっている」といわれる所以のウクライナの戦争では、同国が核兵器を放棄してしまったから攻め込まれたんだといったことがまことしやかに囁かれる。だから攻め込まれないためには日本も核を持とうね、という話に転がっていくのである。 だが、これは議論の前提からしておかしい。 なるほどウクライナにはかつてソ連の核兵器が配備されていた。ところが、ソ連という連邦国家は1991年に消滅してしまったため、それからいろんな駆け引きを経てウクライナからの撤去が決まった。1994年に米国・英国・ロシアとウクライナが交わしたブタペスト覚書は、旧ソ連の核兵器をウクライナから撤去する代わり米英露はウクライナの安全を保障するという内容だ。核兵器のロシアへの移送が完了したのは1996年である。 この旧ソ連の在ウクライナ核兵器はずっとモスクワがコントロールしていた。だから、ウクライナに置かれていたといってもウクライナをもって核保有国とするのは正確ではなかったろう。また、仮に今日まで核兵器がウクライナに置かれ続けていたとしても、そのいわば使用権はロシアの首都たるモスクワにあるのだから、今回のロシア侵攻に対する抑止力にもならなかった。 むしろ注意しなくてはならないのは、ロシアの侵攻(2月24日)直前だった同月19日、ミュンヘンで行なわれていた「安全保障会議」でウクライナのゼレンスキー大統領が前記ブタペスト覚書の「再検討」(ウクライナへのNATOの核配備)を口にしたことである。これがプーチンを刺激して侵攻への制御のハードルを下げてしまったのは、マスメディアは黙して語らないけれども事実ではなかろうか。 もちろん、それを「待ってました」とばかりゴーサインを出したプーチンはよくない。そうして、アメリカがまたロシアの侵攻開始を「待ってました」とウクライナへの軍事支援を強めたのである。 これを要するに、核兵器を放棄したから攻め込まれたのではなく、その配備をちらつかせたから侵攻を呼び込んだというのが正確だろう。 前出エマニュエル・トッド『第三次世界大戦はもう始まっている』を酔流亭は目次を眺めただけなので断定的なことを言うのは控えなければならないが、目次を見たかぎりではウクライナ戦争はロシアではなくアメリカが仕かけたと見立てているのはおそらく正しいのではないか。けれども、そんなアメリカに付いていくなということから日本は独自に核武装しろと薦めるのは、全く余計なお世話だ。核兵器を脅しに使えば相手の警戒心を掻きたて、戦争につながる。長崎原爆忌の今日、そのことを強く述べたい。
by suiryutei
| 2022-08-09 05:24
| ニュース・評論
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