新人事制度 大阪での報告①~③
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十三夜は、一月前の十五夜に次いで月の美しい晩と言われる。新月から数えて13夜目なので、満月になる手前だ。今年は昨日がそうであった。 午後、家を出た。上野駅に向かい、公園口から降りて上野公園の中を歩いていく。今年最後の連休(11月は祝日は2日あるけど連休ではない)の初日、前日までの冷たい雨も上がり、公園の中はたいへんな人である。レストラン〔精養軒〕の前でアコーディオンを弾く女性がいる。 先月、同公園内の東京都美術館で開催されていた〔主体展〕を観に行った。京都在住の知人・岡本裕介画伯が今年も出展していたからだ。展覧会を出てから噴水前のカフェで休息した。そのときも公園は人出が多く、カフェに入るまで少し待たなくてはならなかったのだが、その日はこの女性はそのカフェのすぐ近くで弾いていたので入店するまで彼女の演奏をたのしむことができた。 昨日は『枯葉』なんかを弾いていた。いま<上野公園 ヘブンアーチスト アコ-ディオン>と検索したら、すぐ映像が出てきた。この人である。 それから不忍池の畔を歩いて湯島に抜け、神田へ。蕎麦の〔まつや〕で【いてんぜ通信】同人仲間の三上広昭さん、田中伸治さんと待ち合わせていた。この顔ぶれで前回飲んだのは6月の夏至の昼間であった。そのときのことは【いてんぜ通信】秋号に書いた。 薬草料理で酒盛り ギレリスが弾くブラームスにすっかり気分を良くしてから家を出る。本通信の今年春号(第5号)に寄稿した『暮れの酒、正月の酒』という文章で飛騨古川の旅館〔蕪水亭〕に触れた。その〔蕪水亭〕がこの日、東京に出張していたのである。JR有楽町駅前の新有楽町ビルの地下一階の一角を借りて店を出す。私より少し歳の若い〔蕪水亭〕あるじは板前としても秀逸な人で、しかも進取の気風。今は薬草を採り入れた料理を次々と工夫している。月に一度の東京出張は商売の損得よりも薬草料理を伝道したいという思いからだろう。その東京出店に行った。 お相手してくれたのは本通信の仲間である三上広昭さんと田中伸治さんだ。このお二人と5月の連休明けに神田で蕎麦屋酒をご一緒したとき飛騨の地酒が美味いことをほのめかしてお誘いしたら快諾してくださった。三上さんに会うと、私はいつも黒澤明『七人の侍』で宮口精二が演じた痩身で寡黙な凄腕の剣客、久蔵を思い出す。いっぽう田中さんは本通信における彼の連載の題名(『酒童日誌』)どおりの方である。古武士と酒の申し子という取り合わせがじつによくて、酒が一段と旨くなる。そうしてこの日はもう一人参加者がいた。かれこれ半世紀来の旧友である繭山惣吉君だ。5月1日の全労協メーデーのとき会場の日比谷野外音楽堂で数年ぶりにバッタリ顔を合わせたので、やはり〔蕪水亭〕をちらつかせたら乗ってきた。彼は都立高校で数学の教師をしていたから都高教労組のOB。 ちょうどランチどきだ。10数人は座れるスペースはわれわれのテーブル以外は客がほどよく入れ替わって、おおむね賑わっていた。いつも魅力的な女将さんが、馴染の客に対応をしたり、初見の客には飛騨という土地について説明しながら立ち働く。われわれ4人は酒盛りである。飛騨古川には<蓬莱>を醸す渡辺酒造と<白真弓>の蒲酒造という二つの造り酒屋があり、町の真ん中に通りを挟んで仲良く向かい合っている。だから古川を愛する者としてはどちらか一方の酒だけをえこひいきするわけにはいかないのだ。そこで、まず<蓬莱>を飲んだら、次は<白真弓>、まだ飲み足りなかったら<蓬莱>・・と交互に酌み交わしていかないといけない。こんな歌がふと頭に浮かんだ。
なかなかに暮れない夏至のひとときの酒はゆるゆる飲むべかりけり
まだ昼間である。夏至じゃなくたって、日が暮れるわけはない。どうにもしまらない歌だが、そのしまりのなさが日の長い夏至らしいでしょう。 夏の至りから枯葉が舞いだそうという頃へ。季節は動いた。今回もまた愉しい酒であった。卵焼き、焼き鳥(塩焼き)、鰊の棒煮、そばがき。菊正宗の熱燗。最後は3人とももり蕎麦を手繰る。店の入り口で待ち合わせたときはまだ明るかったのが、出るときは日がとっぷり暮れている。外に出て空を見上げると、雲の合間にまん丸に近い月が。 「あ、月が出ています!」 思わず声を上げてしまった。
by suiryutei
| 2022-10-09 05:36
| 酒・蕎麦・食関係
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