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葉室麟の時代小説『孤篷のひと』を読む。今年最初に読了した本になった。暮れから読み始めたD・グレーバー『負債論』と年明けからのE・ホブスボーム『20世紀の歴史』とは目下格闘中である。この両書は、読みこなしたと言えるまでまだだいぶかかりそう。 孤篷(こほう)というのは、いまネットで仕入れた知識によると「一艘の苫舟」という意味の庵号だそうだ。小堀遠州のことである。豊臣の時代から徳川初めにかけての茶人であり建築家として知られる。すると、始まったばかりの今年のNHK大河ドラマと時代がかぶってしまうが。 しかし酔流亭がこの小説に惹かれたのは、遠州が68歳のときから書き出されているからだ。酔流亭もいま68歳になったばかり。偶然開いた小説の主人公もやはり68歳なんて、何かの縁ではないか。 もっとも、小説は遠州の記憶をたどって時代が前に戻ったりもする。そうして遠州は1647年、69歳で亡くなっている。 主人公が茶人だから当然だが、茶会での会話がたくさん出てくる。会話の相手は千利休とか古田織部とか伊達政宗、藤堂高虎といった有名人である。変わったところでは沢庵なんて坊さんも登場する。 タクアンというのは漬物のことである前に人の名前であったということを酔流亭が知ったのは、小学生のとき観た映画『宮本武蔵』においてであった。萬屋錦之介(当時はまだ中村錦之助)扮した宮本武蔵にとって人生の師のような存在になるのが禅僧・沢庵であって三国連太郎が演じた。暴れ者の若者が坊さんに導かれて人格を陶冶されていくというのは、いかにも通俗・吉川英治原作らしい抹香臭さと言えないこともないけれど、実際に宮本武蔵も沢庵も日本文学史に名を残している。加藤周一の大著『日本文学史序説』下巻の初めのほう(第六章「第三の転換期」)に、こうあるのだ。 「17世紀の初めには、まだ剣をもって戦った戦国武士が生きていた。その経験を生かし、あるいはその経験に訴えて、いくつか剣術の書があらわれる。そのなかでも、簡潔正確な日本語の散文の殊に水際立っているのが、禅僧沢庵(1573~1645)の『不動智神妙録』と、二刀流の剣術家、宮本武蔵(1584?~1645)の作とされる『五輪書』である。」(筑摩書房 21-22ページ) 徳川幕府の宗教政策をめぐって、沢庵は他の2名の僧侶と連名で激しい抗議の手紙を幕府に送り、そのことで京都を追放され3年間の流鏑生活を送るということがあったことに加藤『日本文学史序説』は言及している。<紫衣事件>と呼ばれるその事件を葉室『孤篷のひと』も描く。『孤篷のひと』に宮本武蔵は登場しないが。 美味い沢庵が食べたくなった。そのときはお茶より酒がいい。 なお、葉室麟を読むのは酔流亭はこれが初めてであった。
by suiryutei
| 2023-01-12 09:39
| 文学・書評
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Comments(2)
![]() ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
鍵コメさん、了解しました。
いま検索したところ出てきました。明日ゆっくり読みますね。 それはそうと、こちらこそ今年もよろしくおねがいします。
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