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このブログの左のほうをずっと下がっていくと<記事ランキング>というのがあって、これまでの更新記事のうちアクセスが多かった上位10の記事がリストアップされている。 今朝起きて、『斉藤幸平の新著』と題した今月18日更新の記事がそのトップになっているのに気付いた。 その斎藤の新著とは、今月10日に出たばかりの『ゼロからの「資本論」』という本だ。NHK出版新書。 彼の前著『人新世の「資本論」』はおおいに売れた(40万部を突破したそうだ)から、次は何を書くか皆さん関心があるんだろうな。 ところが、酔流亭の18日更新記事はその本を読んだと書いてあるだけで、内容をまだ論じていない。書評めいた文章は翌日の19日に書いて、『伝送便』誌2月号に載せてもらおうと同誌編集部に送ってある。 『伝送便』2月号の完成はまだ先だけれども、その文章を一足早くここに公開します。写真の下に全文を転写しました。 書評『ゼロからの「資本論」』(斉藤幸平著、NHK出版新書)税込み1023円 気鋭の論者による新著である。まず目を惹かれるのは「疎外」という概念が論じられていることだ。 「資本主義は膨大な富をもたらしたように見えるけれど、私たちの生活にはむしろ余裕がなくなっている。その結果、欲求や感性は瘦せ細って貧しいものになっています。一八〇年前、二〇代半ばの若きマルクスは、この状態を<労働の疎外>と呼びました」(九二ページ)。 そして著者はこの<疎外>の原因を資本の専制による「構想」と「実行」の分離に求める。つまり「構想」は特定の資本家や現場監督が独占し、労働者は「実行」のみを担わされるわけだ。 私は郵便労働者として四〇年以上「実行」ばかり担わされてきたから、単調な労働の苦痛は著者以上に身に染みているつもりだが、著者の説明にはちょっと違和感を持つ。なるほどそうした精神的労働と肉体的労働の分離も疎外であるには違いない。しかし、労働者が疎外感を覚える第一は、自らの中身を資本に吸い取られていく(搾取される)そのこと自体ではなかろうか。マルクスの盟友エンゲルスを著者はマルクスより一段格落ちに見たがるけれども、エンゲルス不朽の名著『イギリスにおける労働者階級の状態』がまず明らかにしたのもこのことだ。私の場合で言えば、「構想」から排除されて「実行」ばかりやらされたことよりも、深夜不眠の労働で自分の健康が目に見えて磨り潰されていったことだ。著者はせっかく別のところでは「資本主義の本質は、商品の等価交換の裏に潜んでいる、労働者の搾取による剰余価値生産にあります」(一六七ページ)と問題を正しくとらえているのに、こと疎外については的を外しているように思う。 六つの章から成るうち第五章は「グッバイ・レーニン!」となっている。といってもレーニンの思想について論じているわけではない。マルクスを称賛するとソ連を賛美しているのかと誤解される。それが嫌だということである。先に疎外をもっぱら「構想」と「実行」との分離によるとしたのも、官僚が牛耳った社会主義国の国営企業も労働者を疎外する点では同じだと言いたいための伏線であったろうか。国有と共有とを二項対立させて前者を退けるのは、歴史感覚を欠いた議論であるように思う。日本を含む列強による干渉戦争で締め殺されかけた革命後のロシアが、また独ソ戦という絶滅戦争を仕かけられて二七〇〇万人とも言われる途方もない死者を出した第二次大戦後のソ連が、国有段階を飛ばしてただちに共有に進む余力がありえたかと私などは思う。もっともそのため様々な歪みが生まれたのは直視しなければならないが。 著者が言いたいのは、国有状態(国家資本主義)を固定して共有(コミュニズム)へ進むことを阻む勢力が現存した社会主義国内部にはいたということだろう。それはあったと私も思う。ただ、レーニンをあっさり切り捨てるのではなく、彼の苦闘にもっと思いを致してほしかった。いっぽうグローバル・サウスからの収奪と裏腹の福祉国家論やBI(ベーシックインカム)への著者の批判にはうなずいた。 ※斉藤幸平の前著『人新世の「資本論」』について雑誌『労働者文学』No.88に書いた書評記事はこちら。
by suiryutei
| 2023-01-25 05:20
| 文学・書評
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