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昨日の日記に書いたように、『近代日本の戦争』(色川大吉著 岩波ジュニア新書)をいま読んでいる。こんなくだりがあったので、驚いた。 「この戦略爆撃(日本の各都市に対する無差別空襲のこと。広島・長崎への原爆投下を含む)の作戦計画の責任者は米第20空軍司令官カーチス・ルメイだが、彼は戦後、来日した折、自民党政府から勲一等旭日大綬章という最高勲章をもらっている。日本の政治家の歴史健忘症のひどさにはおどろく。彼らは戦略爆撃と称して日本のほとんどの都市の焦土作戦を強行し、民間人だけで56万人を殺したと推定されている」(90ページ)。 非戦闘員の殺戮を狙ったあの無差別爆撃の背景には、明らかに人種差別思想があったろう。たしかに先に中国の都市に無差別攻撃を仕掛けたのは日本のほうだし、日本軍の捕虜取り扱いの国際法に反した過酷さが、「あんな奴らには何をしたって許される」という報復感情を誘引したのは間違いない。しかし、それにしたって、自国民に対するジェノサイトを指揮した男に何も勲章までやらなくたっていいじゃないか。いくら敗戦国だからって。 これと比べると、A級戦犯に「こだわる」中国や韓国はなるほど「執念深い」と見えるかもしれない。しかし、この場合はわれわれの忘れっぽさのほうが異常なのではないか。 日本の政治家および御用評論家たちが忘れたがっていることがもうひとつある。それは日本に対する中国の戦後処理がきわめて寛大なものだったことである。戦後の中国政府は、降伏した日本兵への報復を禁じ、さらに日本国への賠償請求権の放棄を宣言した。 「しかも相手は暴虐の限りをつくした日本に対して、仇を恩で返すことを国是とし、いっさいの報復主義を排して逆に手を差し伸ばして来ている。それが容易なことでないことは、立場を変えてみれば自明である」。 これは、石橋湛山が戦後15年にあたって中国について述べた言葉だ(『池田外交路線へ望む』1960年8月)。リベラル派とはいえ湛山は自民党の総理総裁経験者である。72年の日中国交回復あたりまでは、このような認識は保守派も含めてひろく存在していたのだろう。 過去の戦争を美化したがっている諸氏には、これが面白くないのである。日本が道義的にも中国に敗れたのだというコンプレックスを、なんとか払拭したい。そこで「靖国問題」でも「過去に寛大な日本(死ねば誰でのホトケになる?)」に対して「偏狭で執念深い中国・韓国」という虚偽の図式を描き出そうとしている。これも要注意だろう。
by suiryutei
| 2005-08-14 18:07
| ニュース・評論
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Comments(4)
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chaotzu at 2005-08-14 22:47
ルメイ叙勲はアメリカに無差別爆撃の免罪符を渡したようなもので、このときの防衛庁長官は小泉現首相の父親です。
さすがに後ろめたかったのか、役人が事務的に授与したようですね。
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suiryutei at 2005-08-15 09:48
ああ、なるほど。
しかし、政治家の世襲というのも、目に余りますね。このところの総理大臣は、みんな二世ですもん。そして次はA級戦犯の孫か。
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naomu-cyo at 2005-08-16 17:09
最近「阿片王」という本を読み、戦前満州や上海で暗躍していた軍部の中でも戦後の政治に参与した人がいるのを知りました。そして東条英機の次男は三菱化学(だったか)の会長にまでなったそうで・・・。田舎だと、犯罪者の家族は村八分にされたりしたというのに、なんでしょう、この待遇!と驚きました。東京裁判を表向きは受け入れ、実のところ反省の気持ちが微塵もなかったということの表れなのでしょうか。
アジア諸国に対して、なんでこうまで優越感を抱いていたいのか、その感情の根拠を知りたいものです。
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suiryutei at 2005-08-17 16:22
東京裁判の審理にはたしかに杜撰なところがずいぶんあったようですが、しかしその杜撰さのおかげで天皇は責任追及を逃れられたわjけで、あの裁判の杜撰さを言うなら、まずそこから問題にしないといけませんよね。それにしても、外に向かっては受け入れたと言い、内では舌を出してみせるようなことをやっていたのでは、世界から信頼されずに結局自分が損をすることになると思います。
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