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『伝送便』誌3月号に寄稿した文章を転写します。 タイトルにある<断腸>とは、<ーの思い>とつなげると「はらわたがちぎれるほど、非常に悲しいこと」という意味で言われることが多いですが、ここでは文字通り「腸を断ち切られた」ということです。つまり腸捻転の手術を受けた体験談。断腸亭日乗の永井荷風は、世を憂える悲しい思いと、しかしあの人もずっと腸を患っていたから、お腹が痛くてつらい思いとの両方をこめて、日記をそう名づけたのだろうなあ。 なお【いてんぜ通信】今年春号に寄稿した『豆腐で飲む』(本ブログ2月27日更新記事に全文を転写)は入院する直前で終わっているので、本稿はその続きになります。 我が闘病記はこの先まだ続きそう。おいおい書いていきます。 全身麻酔による手術を生まれて初めて経験した。病気は「S状結腸軸捻転症」というもの。S状結腸とは大腸の末端にあって直腸につながる。私のそれは一昨年から何度か捻転、つまり捻じれた。捻じれては腸が閉塞する。危険な病気である。発症するたびに内視鏡による整復治療を受けてきたが、頻発するならいっそ手術をしてS状結腸を切除してしまえ。医師と相談して、そう結論したのが去年一二月二〇日である。 ところが手術室がずっと塞がっている。最短で一月末まで待たなければならない。それまで捻転を発症させないこととコロナに感染しないことに気を使った。直前にコロナに感染しては、せっかく決まった手術日程が吹っ飛んでしまう。 一月二八日(土曜日)、柏市内にある某医大付属病院に入院した。二九日から絶食、同日の午後は二リットルの下剤を飲んで腸の中を空にする。三〇日正午に手術室に入った。 手術台に身を横たえると、幅があまりない。たしかに施術中に患者に寝返りなんか打たれても困るだろうから横幅をとる必要はない。身体が少し左にずれていたようで、姿勢を正される。正されながら「オレはやっぱりこういうときだって左寄りなんだぞ」と妙に嬉しくなっているうちに麻酔が効いて意識が薄れていった。 意識が戻ったのは午後四時四五分ごろである。連れ合いが顔を覗き込んでいる。手術にかかった時間は二時間半ほどと聞いた。医師によれば、切除された我がS状結腸は風船のゴムが伸びきったような状態だったとのことだ。捻転して腸が閉塞しているとき湯ぶねに浸かると身体に浮力がついているのを感じた。腸内にガスが溜まっているからである。自分の身体をゴムボートみたいだなと思った。だから風船であれボートであれ「ゴムが伸びきった」というのはよくわかる。消化器官として限界に来ていたのだろう。 それから四日間の絶食をへて、二月四日のお昼から流動食を口にすることができるようになった。いったん切断された腸が、数日後にはつながってまた機能し始めるのだから、医療とは、また身体の復元力とはたいしたものだなと思う。九日に退院する。一二泊一三日の入院生活だった。 手術後の二日間はメスを入れられた箇所がひどく痛かったこと以外はおおむね快適だった。痛みも二日が過ぎると日に日に和らいでいったし。 看護師さんたちが若い人ばかりなのには驚いた。医大の附属病院で看護学校も併設されているから、そこの学生たちの実習の場でもある。看護師が育っていくのに実践教育が必要であるわけだが、ベテランというべき人たちがあまりに少ないのではという気もした。看護師の勤務はハードなので長くは勤められないということがあるように思う。看護の労働現場においても進む非正規化ということでもあろうか。看護師一人につき午前八時から午後四時半は患者五~六人、午後四時半から翌朝八時は患者一六~一八人という配置だという。深夜勤務はやはり辛いだろうな。 この冬、イギリスでは保守党政権の緊縮政策の下すすむ医療現場の荒廃に抗して看護師たちがストライキで闘っている。ストで人が死ぬという政府の宣伝に、そうではなく人びとが死んでいくからストに立ち上がらざるを得ないのだと看護師たちは反論する。反論のほうが正しいだろう。
by suiryutei
| 2023-03-07 06:49
| ニュース・評論
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Comments(2)
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こんにちは。お元気ですか。だんだんと平穏な日常を取り戻されているようで何よりです。
今日の東京新聞の10面「今週のことば」に、 『病がまた一つの世界をひらいてくれた。桃咲く。坂村真民』という一首がありました。 土田さんもまたより深い認識と考察に至ったのではないですか。それをどう文学として表現していくかですね。 私は世界がひらかれなくてもいいから(!?)、病気はなるべくしたくないという思いで、毎日ウォーキングしてます。 また春には本郷で。一杯やりましょう。
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牧子さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。 今朝の東京新聞10面は、その上の記事が土本典昭や水俣のことに触れていたのに目を奪われて、その下の<今週のことば>は見落としていました。でも、今の自分にしっくり来る言葉です。教えてくださり、ありがとうございます。 一杯やりたいですねえ!桜が散る頃にはもうすこし飲める体調に戻っていると思います。よろしくおねがいします。
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