新人事制度 大阪での報告①~③
記事ランキング
最新の記事
タグ
労働(124)
最新のコメント
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
小説家・大江健三郎の訃報を聞いたのも入院中のことだった(3月3日逝去、報道があったのは13日)。 酔流亭は大江文学の読者ではない。氏の著作では、短編の『セヴンティーン』(1961年発表)を20代のころに、それから去年秋『沖縄ノート』(岩波新書、1970年刊)を読んでいるだけだ。 『沖縄ノート』では、ときにくどくどしい文章で(ノーベル賞作家に向かって失礼!)観念的なことが綴られる一方で、著者は復帰前の沖縄基地労働者(全軍労)のストライキの場にも足を運ぶ。 「ピケの基地労働者たちが、祭りの夜の仮装した農民のような具合にタオルや襟巻きで顔の皮膚をおおいかくし、その上に深ぶかと帽子をかぶっているのは、米軍側の情報収集者に顔を確認されないように、というよりはむしろ、雨と風の過酷さに耐えるためであると感じられる。・・」(134ページ) 小説家の筆でこう書くことができるのは、その場に書き手も身を置いてこそである。 現場に足を運ぶそういう人であるから、大江文学の読者ではない酔流亭も集会の場では氏の姿を見かけたことは何度かある。2012年3月に福島県郡山市の開成山球場で開催された<原発いらない! 県民大集会>で、また同年7月、都内代々木公園で開催された<さようなら原発 10万人集会>でもお見かけした。他にもあるはずだが、3.11翌年のあの年のことが印象に強い。 代々木公園での集会は、予めの名称は10万人集会だったけれど、集会とデモのあと、主催者から「17万人参加」とたしか修正があったと思う。その盛り上がりのなか檀上で発言した大江さんは中野重治の小説『春先の風』から、つぎの言葉を引用した。 「わたしらは侮辱の中に生きています」 戦前、1927年に行なわれた共産党員一斉検挙(3・15事件)で、若い母親が乳飲み子ごと検束され、幼子は留置所で体調に異変をきたして死んでしまう。その母親が夫に宛てて書く手紙の最後の一行がこの言葉なのだ。 20年ほど前、中野重治生誕の地である福井県丸岡町を訪ねた。町の図書館に併設された〔中野重治記念文庫〕にも立ち寄った。館内を案内してくれた女性職員が「大江健三郎さんは中野をとても尊敬していて・・」と話してくれたことを、2012年7月の代々木公園で思い出した。 読んではいないけれど、本棚に何冊かはある。『万延元年・・』は近いうちに読もう。
by suiryutei
| 2023-03-18 08:08
| 文学・書評
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||