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あのチャーチルは、朝からスコッチウイスキーを飲んでいたらしい。 昨日の午後NHKBSで放映された『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(ジョー・ライト監督、2018年イギリス)で、彼が最初に登場するのは、まだ寝室のベッドにいる彼に朝食が運ばれてくる場面である。ベーコンエッグみたいないかにもイギリス人の朝食らしい皿なんかと一緒にウイスキーのソーダ割り(すなわちハイボールですね)の入ったグラスが膳に載っていた。 映画はチャーチルの伝記というのではなく、ナチスドイツの脅威が迫る中で彼がイギリスの首相に就任し、ドイツ軍に包囲されていたダンケルク(フランス本土の最北部)から30数万人の英仏兵士を脱出させるまでの1940年5月ー6月の4週間にしぼって描く。チャーチルはイギリス全土の海港から民間の船まで徴発して、ドーバー海峡を渡ってダンケルクに向かわせ、兵士たちを生還させる。 実在した人物たちが動き回るのだから、史実を踏まえているには違いない。ただ、いくらかの誇張もあろうかと思う。チャーチルは毎日、先述したように朝はウイスキーを飲むだけでなく、昼はシャンパン、夜はワインにブランディを飲む。60代なかばの老人(チャーチルは1874年生まれ)が本当かよと、病後療養中で今は晩酌さえ自ら禁じている酔流亭は、羨みつつも疑う。 誇張といえば、ダンケルク撤退にしてもあれはチャーチルの作戦の成功なのか、それとも包囲してイギリス人の心胆を寒からしめたことで充分と、ドイツ軍が殲滅戦に出るのをあえてひかえたのか、評価は分かれるところである。ヒトラーが本気で皆殺しを考えていたのは、ユダヤ人とともに東方のスラヴ人たちに対してであった。そのためにはイギリスと早くから全面戦争に入るのは、ヒトラーとしても避けたかったところだろう。 「・・ウィンストン・チャーチルは1914年以降、自画自賛していた軍事戦略の評価を含め、あらゆることに関する政治的判断がほとんどつねに間違っていたのだが、この偉大なロマンチストは、逆説的にもことドイツの問題については現実主義であった」。 こう語るのは、あの時代を青年として生きたエリック・ホブズボームだ(『20世紀の歴史』第1部5章「同じ敵に抗って」)。 ホブズボーム(1917-2012)はマルクス主義の立場に立つ歴史家だが、「あらゆることに・・ほとんどつねに間違っていた」とチャーチルをこき下ろす声は、映画の中で彼と同じ保守党にいた政敵の間でも語られていた。チャーチルは、映画では描かれないが、インドにおける対英独立闘争を無慈悲に鎮圧し、ガンジーを敵視した。酔流亭としてもとても共感する気にはなれない人物である。ただ、ファシズムに対してあらゆる人々が武器をもって立ち向かわざるを得ない局面においては彼は生き生きとしたのであろう。なにしろ戦闘的ロマンチストだから。戦後すぐの総選挙でアトリー労働党にチャーチルが敗れたのを、戦争の英雄がどうして?と酔流亭はずっと疑問に思っていた。映画を観て、なんとなくわかった気がする。
by suiryutei
| 2023-03-24 09:37
| 映画・TV
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