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NHKBSプレミアムの毎週月曜午後6時台は、過去の『NHK特集』のうちおそらく評価の高かった番組を選んで再放送するようである。昨日は『井伏鱒二の世界』というのを放送した。1983年に制作放送されたもの。井伏(1898-1993)はそのころ85歳である。『鞆ノ津日記』という作品を雑誌に連載中とテロップが流れた。 ![]() 『鞆ノ津日記』は雑誌『海燕』の1983年7月号から85年8月号まで連載され、86年3月に『鞆ノ津茶会記』と改題されて単行本になって福武書店から刊行される。酔流亭がそんなことに詳しいのは、刊行されたとき初版を買って、しかしずっと積読(つんどく)にしてあったのを、今年初め、たまたま本棚から抜き出して読んでいたからだ。1月末に入院することが決まっていた頃である。わが人生で初めての全身麻酔による手術を前に、井伏鱒二の世界に浸っておきたかったのだ。酔流亭にとって井伏はそういう小説家である。とにかく好きなのだ。 NHKは三か月にわたって取材したという。井伏が暮らした杉並区荻窪を中心に取材されているから、随筆的作品『荻窪風土記』の映像化と言ってもよかろう。井伏の作品によく登場する善福寺池、行きつけの街の寿司屋なんかが出てくる。作品から朗読するのは俳優の日下武史。 開高健が訪ねてくる。番組当時まだ52歳だ。 「もっとあけすけに書いてくださいよ」 大先輩に突っ込みを入れたりする。 「文章は洗練されていくんだけれど・・」 と、自分の悩みとして語るのだが、井伏のことを諷しているようでもある。文章はいよいよ冴えてきながら、さて何を書くか・・・職業作家なら誰でもが抱える悩みであろうか。 開高はそれから数年後、1989年に59歳の若さで亡くなる。30歳以上年長の井伏は1993年まで生きた。大往生であったろう。 ![]() 太宰治の思い出を語る場面もあった。慕われながらも、手を焼く弟子であった。お互い相手をうざったく思いもしたろう。 井伏鱒二の作品で酔流亭が一番好きなのは戦後の『駅前旅館』である。作品に甲府の湯村温泉〔常盤旅館〕という温泉宿が登場する。東京の駅前旅館の番頭たちがここへ親睦旅行に出かけるのだ。モデルとなった〔常盤ホテル〕のロビーには今も井伏鱒二の写真が掛かっている。 ![]() 『荻窪風土記』も好きだが、関東大震災当時の記憶をたどる叙述には納得しかねる箇所もある。そのことについては以前、佐多稲子『私の東京地図』と照らし合わせて書いたことがある。
by suiryutei
| 2023-05-09 09:17
| 文学・書評
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Comments(2)
荻窪風土記も自選全集ももっています。
想い屈したときに読みたくなります。 そのテレビも昔みたなあ。 開高が大声でしゃべっていたり、将棋をする所もありましたよね。
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佐平次さん、コメントありがとうございます。
自選集の箱にも井伏の絵が描かれていますね。これもとてもいいです。開高健たしかに声がでかかったです。
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