梅雨の晴れ間の居酒屋で

都内で会合があって、終わったのは午後4時過ぎであった。

ちょいと軽く一杯ということになるのだが、時間が微妙である。居酒屋が暖簾を出すのは5時からだし、昼に営業する店もランチタイムが過ぎれば午後2時くらいから5時までは休む。神田界隈なら休まず通しで暖簾を出している店を知っているけれど、その日いたのは本郷であった。

すこし探して、幸いにも、地下鉄本郷三丁目駅のすぐ近くに「営業中」とある店を見つけた。そこに入る。

そんな早い時間（日の長い今の季節、午後4時過ぎなんてまだ真昼みたいだ。梅雨の晴れ間で青空がひろがっていた）のことだから、店内に他に客はいなかった。

テーブルにTVを小さくしたようなものが置いてあって、タッチパネルの画面にメニューが出る。それに触れて注文する。

（不忍池畔の紫陽花。今日の記事とはあまり関係ありませんが）

われわれは4人であった。まず瓶ビールを2本注文する。これとお通しはすぐ来た。ところが、そのあといくつか注文したつもりの料理（鮪のブツとかモツヤキ盛り合わせとか茄子を煮て冷やしたのとか）がなかなか来ない。ゆっくりと飲んでいたビールが切れてしまう。

「料理のほう、通っている？」

店の人に訊くと

「何も通ってませんよ」

タッチパネルでは欲しいものに触ったあと「注文確認」というところに触れる。ところがそれではまだ注文は完了しなくて、そのあとまた「注文」という言葉に触らなくてはならない。それを怠っていた。

つまりこちらのミスだ。しかし、時間がもうだいぶ経っていたんだから「ご注文は？」とか「タッチパネル触り忘れてませんか？」とか、一声かけてくれればいいのにと思ったが、店のほうも人が少ないのだろう。ホールではアルバイトらしき若い男性が一人だけである。

注文をやり直したら、今度はスムーズに料理が運ばれてきた。モツヤキだけは少し時間がかかった。ビールのあとは清酒を飲んだ。

タッチパネルでの注文はどうも味気ない。居酒屋に行くのが億劫になりそうだ。節酒できていいと言われそうだが。