新人事制度 大阪での報告①~③
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今年の春、3月20日の更新記事の中でこんなことを書いた。 ・・日本全国に造り酒屋が現在何軒あるかは知らない。旅に出て行き当たりばったり、造り酒屋を訪ね、中を見学させてもらい、もしも出来たら試飲もさせてもらう。そうして近くの居酒屋に腰を据え、その酒を土地の食べ物とともに味わう。・・・こういう旅を年に何回かはやってみたいな、というのが酔流亭が働いていたときの退職後の夢であった。 現実には、手元不如意その他の事情で、そういう旅は滅多にはできないまま、退職してもう何年もたっている(たまにはやりましたが)。そうして病に遭って、旅の空の下での酒どころか、自宅での晩酌さえ今は我慢しなければならないことになった。 ところが、NHKBSに『呑み鉄本線・日本旅』なる番組があって、俳優の六角精児がそういう旅をやっているんだね。・・・ この<『呑み鉄本線・日本旅』なる番組>が昨日の夕方放送された。六角精児は北海道のローカル線で夕張のかつての炭鉱町を訪ねる。2017年放送の再放送だという。上に引用した過去記事を書いてから四か月がたち、酔流亭も今や晩酌を復活させて、それを視ていた。 六角精児が乗った電車がかつて炭鉱で栄えた町に近づくと、あちこちに小さな山が出来ているのが車窓から見える。石炭を掘って出た土を盛った小山である。六角や土地の人がそれを「ズリ山」と呼ぶのを聴いて、武井昭夫に『ズリ山の火を消すな』という文章があるのを思い出した。なおズリ山のズリは漢字をあてれば<擂>であろうか。すりつぶすといった感じだ。そういうふうに炭鉱を掘って、出た土や石を掻いて盛っていったのだろう。 ![]() 雑誌『新日本文学』の1963年5月号に掲載されたものだ。その3年前、武井は炭鉱労働組合本部から依頼され、北海道の炭鉱での文学講座の講師として道内約20の炭鉱をまわった。石炭が斜陽産業となり、炭鉱の合理化・廃坑が続く中で、炭鉱労働者たちの文学サークル活動はどうなっているのか。一編のタイトル『ズリ山の火を消すな』とは、炭鉱労働者たちの文学活動の火を消すなということである。 その武井の文章が、意外にもと言うか、いや当然ながらと言うか、音楽評論家の吉田秀和の或る文章が言わんとしたことと同じことを述べているのではないか、ということを酔流亭は12年ほど前に書いたことがある。「意外にも」というのは、この2人は棲息した世界が大きく違うからである。「当然ながら」というのは、にもかかわらず優れた文章の書き手なら本質的なところで問題意識を同じくするだろうからだ。 そのときの更新記事は、これ。 後半だけ引こう。 これ(吉田の文章)を読んで、あれ、似たようなことを最近読んだなと思い当たったのが、武井昭夫さんの『ズリ山の火を消すな』という文章だ。 「『憎しみ』『怒り』『悲しみ』という言葉が羅列されているが、どんな憎しみなのか、どんな悲しみなのか、なにひとつ表現されていない。俺は怒っているんだと叫ぶのではなく、俺の怒りのなかみを表現することによって、他人の怒りを創造し組織するという最も初歩的な姿勢がこの作者にはまだないのだ」。 これは北海道の炭鉱労働者の文芸サークル誌に載った詩を批判したもので、詩の作り手が自分ひとりの感情に流されることを戒めている。1963年に書かれた当時、炭鉱はまだあちこちに残っていた。「ズリ山」とは、石炭を掘った石を盛ったものであろうか。 クラシック音楽の高名な歌手(酔流亭はコジェナーという人を知らないのだけれど、吉田さんが絶賛するのだからきっとそうだろう)と、おそらくはガリ版刷りで作られたのであろう労働者のサークル誌とでは世界は全然違うけれど、二人は同じことを言っているのだ。吉田さんは歌手を誉め、武井さんは詩の作者を批判しているという違いはあるけれども。
そしてこれはなにも芸術ー音楽や詩の世界だけのことではないだろう。おこがましいけれども酔流亭が労働現場で書くビラだって、そうでなくてはならないと思っている。
by suiryutei
| 2023-07-14 06:08
| 文学・書評
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Comments(4)
![]()
六角さんの呑み鉄の旅は時々再放送していますね。日本の酒蔵かなり減ったが1600くらいあるようです。最近ワインやビールの小規模醸造所ができているように新しい酒蔵もできているというニュースを時々耳にします。
諸事多忙で美術館博物館になかなか行けず酒造巡りまで手が回りません。本も読みたいが庭の手入れも大変で。
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星の王子様さん、おはようございます。
何かとお忙しいご様子、わかります! 私が飲み始めた頃は全国に2000以上の酒蔵があると言われていましたが、年々減っています。クラフトビールの小さな醸造所なんかは、おっしゃるように新しくできているそうですね。 ![]()
おはようございます 7月18日の日本農業新聞に米のウイスキーが茨城や沖縄などで生産が増え輸出も有望らしいです。近年日本のウイスキー人気がありますね。
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