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労働者文学会が発行する雑誌『労働者文学』の最新号が昨日届いた。 ![]() 文学会の会員で三年前に逝去された木下昌明さんの最晩年の日記をまとめた『木下昌明のがん日記』(積文堂、限定私家版)についての感想を酔流亭は寄稿した。写真の下に全文を写します。 なお酔流亭が5月に編集部に送った原稿と、活字化された誌面とでは一部ちがいがある。まず下に写すのは、酔流亭が送った原稿の全文。『労働者文学』誌誌面ではどこがどう違っているかについては、対象テキスト(『木下昌明のがん日記』)の写真の下に書きます。
![]() 日記は2014年10月から始まる。肛門と前立腺に癌が発見されたのはその二年前だから、もうずいぶん大きくなっている。そのころ、友人で食道癌を患う「沢木くん」と電話で大きさを比べあい、彼が8ミリと言うのに自分の肛門のそれは8.5センチ、相手を絶句させた。 「沢木くん」とは、労働問題研究者の沢木勇氏のことだろう。私も面識がある。氏の癌の進行は早く、その年(2014年)を越さずに亡くなった。まだ60代だったと思う。木下さんも病勢が進むにつれ、その大きな癌からの出血は失血死するのではないかと慄くほど。それでもガーゼとナプキンを当てがって血を止め、人工肛門を装着した身体で映画を観に出かける。デモにも参加してハンドカメラで取材した。2015年は「戦争法」をめぐって多くの人々が連日国会を取り巻く。 内服薬として処方された薬を擂り粉木で粉状につぶして患部にじかに塗ってみたりしていることには驚いた。医師は当然いい顔をしないが、「医者を拒否するのではなく、医師と問答しながら、自分で考え、ためして治療していく。これがぼくのがん治療法だ」(2016年11月9日)。内服すれば身体全体で薬を吸収してしまうので、病患には有効な薬が、他の正常な細胞に悪い作用を及ぼすことがある。患部にじかに塗れば、そんな副作用は避けられるというのが木下さんの考えで、理にかなっていると思う。 2020年になるとコロナ禍が世を覆う。病院には入院と退院をくりかえすが、入院したら家族との面会もできない。体力が徐々に衰えていく様子が叙述から覗われる。8月の終わりに退院し、団地の自宅で医師と看護師の訪問治療を受けながら、息を引き取ったのはその年の12月6日であった。享年82。日記は11月28日まで綴られた。 そのあと、2020年の欄外覚え書きとして好きな映画30本が挙げられている(邦画18本、外国映画12本)。ケン・ローチでは近年評判になった『ダニエル・ブレイク』や「家族を想うとき」より1969年の抒情的な『ケス』を入れている。30本には入れていないが、古い西部劇もお好きだったらしい。日記の中に題名が出てくる『ウィンチェスター銃73』(1950年、アンソニー・マン監督、ジェームズ・スチュアート主演)は私も去年NHKBSで放映されたのを視た。西部劇の中には、たっぷりの通俗性にまぶされた中に、先住民を収奪し、北部資本主義の国内植民地に南部をしながらのアメリカ合州国の成り立ちというものをちらり垣間見せる作品もある。 私は今年初め、胃に癌が発見された。まだ初期だったから内視鏡手術によって摘出することができたが、68歳にして自分の人生の残り時間というものを考えさせられた。そんなとき出会ったのが木下さんのがん日記だ。このように生きる力をすべて使い尽くすことができたらいいと思う。 ![]() さて上の文章のうち、最後から二番目の段落を再掲する。 そのあと、2020年の欄外覚え書きとして好きな映画30本が挙げられている(邦画18本、外国映画12本)。ケン・ローチでは近年評判になった『ダニエル・ブレイク』や「家族を想うとき」より1969年の抒情的な『ケス』を入れている。30本には入れていないが、古い西部劇もお好きだったらしい。日記の中に題名が出てくる『ウィンチェスター銃73』(1950年、アンソニー・マン監督、ジェームズ・スチュアート主演)は私も去年NHKBSで放映されたのを視た。西部劇の中には、たっぷりの通俗性にまぶされた中に、先住民を収奪し、北部資本主義の国内植民地に南部をしながらのアメリカ合州国の成り立ちというものをちらり垣間見せる作品もある。 その最後、 <西部劇の中には、たっぷりの通俗性にまぶされた中に、先住民を収奪し、北部資本主義の国内植民地に南部をしながらのアメリカ合州国の成り立ちというものをちらり垣間見せる作品もある。> と書いたのが、『労働者文学』誌面では、こう変わっている。 <西部劇には珍しく、たっぷりの通俗性にまぶされた中に、先住民を収奪し、北部資本主義の国内植民地に南部を加味しながらの合州国の成り立ちをちらり垣間見せる作品でもある。> なんらかの手違いがあったのだろうか。あるいは1ページの枠内にギリギリ入れるためのやむを得ざる処置ということか。しかし、酔流亭は18字×65行(これで1ページ内に収まる)で組んで収まるのを確認してから送稿したのだが。 ともあれ、文意が違ってしまったので、書き手としては元々の文章はこうだったということは書き留めておく必要があると思う。
by suiryutei
| 2023-07-29 08:18
| 文学・書評
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