新人事制度 大阪での報告①~③
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一昨日授賞式と合評会が行なわれた今年の労働者文学賞で、小説部門の特別賞を受賞したのは『僕は郵便配達という仕事が大好きなんだ』。 作者の上田修さんは、21世紀が始まる頃、大学を出てすぐ、郵便局の集配の仕事に時給制労働者として二年間従事した。公務員試験に合格して転職したのだが、当時のその体験が小説になった。現在はハローワークの窓口業務をされているということだ。 通常の文学賞受賞ではなく、特別賞となったのは、賞の応募規定では原稿用紙400字詰めで50枚以内のところ、120枚にも達していたからである。 選考にあたっては扱いに苦慮したが、除外してしまっては惜しい、特別賞に図らわれたと、一昨日の合評会では冒頭に説明があった。 その合評会の場での酔流亭の発言要旨を述べる。 20数年前のことをこれだけ活き活きと叙述する筆力はたしかなものと思う。ただ話の進め方にめぐり合わせの良すぎるところがある。たとえば、配達区域内にあるオフィスにいる女性社員に心ときめくが、大学時代の同級生で有名企業の正社員となった男と実は彼女は婚約していた・・・なんて展開は、正規雇用と非正規雇用との対比をくっきりさせようとするあまり作り事めいてしまって、ちょっと安易ではないか。 もっと根本的な問題。 郵便の時給制労働者(いわゆる非正規雇用)になった自分を「できそこないのフリーター」と自嘲する場面がある。しかし時給制労働者は「できそこない」であろうか。「できそこない」なのは時給制労働者が置かれた待遇がそうなのであって、労働者が出来損ないなのではない。できそこないでは決してない労働者ができそこなった環境に置かれていることが問題なのだ。だから、その現実を変えることが大事だ。労働者の方ができそこないなのであれば、出口は自分が転職して出来損ないではなくなる、という方向しかなくなってしまうのではないか。 もっとも、この「もっと根本的な問題」として述べたつもりのことが、酔流亭の言い方が回りくどくて婉曲に過ぎたようで、上田さんによくは伝わらなかったかもしれない。 合評会の後の懇親会でも、せっかく上田さんの近くの席にいながら、生ビールを久しぶりに飲み過ぎてしゃべるのが面倒くさくなってしまった。病気をしてから酒に弱くなった。 ちょっと悔いが残ることであった。
by suiryutei
| 2023-09-05 06:50
| 文学・書評
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Comments(2)
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芥川賞作品「コンビニ人間」に、「無職の人間は障碍者と同じで、子をつくる権利はない」という登場人物のせりふがあります。「できそこない」は子どもなんか持つな、という発想です。まさに「もっと根本的な問題」にまったく目をむけていない。
プロレタリア文学、労働者文学、民主文学といえども、ブルジョア的な思想から決して自由ではありません。 でも、それを声高に批判・非難するのではなく、自戒しながら相手にも気づいてもらう。土田さんの鋭い指摘とやさしい気持ちがよく表れていました。酒席だから、それでよかったのでは。またしらふのときでも機会があれば。
2
牧子さん、おはようございます。温かいコメントありがとうございます。最近の合評会は私たちが賞を頂いたころより随分やわらかくなってきた感じです。
それにしても、思うことを相手にちゃんと伝えることにもっと上達しなければ、と思います。
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