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去年の春、床屋で順番を待つあいだ手に取った『週刊ポスト』で目にしたのが最初である。去年3月10日の更新記事にこう書いた。 その『南風に乗る』の単行本を地元の図書館で見つけ、借りてきた。昨日読み終えたところだ。『週刊ポスト』誌上の連載が2021年10月22日号~23年1月6日号であったと、最後のほうのページに書いてある。 図書館に置いてある本だから、帯というか<腰巻き>は表紙をめくったところに貼り付けられている。その謳い文句はおおむね妥当であるように思う。 山之口獏と瀬長亀次郎と中野好夫。 実在した3人の著名な人たちの間を泳ぐように物語の進行役を務めるミチコという女性はおそらく作者の創造だろう。彼女は、沖縄を切り捨てて日本が「独立」を果たすサンフランシスコ講和条約が発効した1952年4月28日、まだ生意気盛りの20歳くらい。詩人たちがよく出入りする銀座の酒場で山之口獏とたまたま出会う。やがて1960年代、中野好夫が東京で自腹を切って開設した沖縄資料センターで働くようになる。資料センターには、都庁勤務をしながら無償で資料整理をしている沖縄出身のアラサキ青年もいるが、この人は新崎盛暉(のちの沖縄大学学長、反戦運動家)のことである。 そして物語の軸になるのが瀬長亀次郎だ。 戦後沖縄の人びとの闘いの歴史を知るのにいい本だ。 不満もある。 伊江島の土地闘争に触れながら、この闘いを語るには欠かせないであろう阿波根昌鴻は名前さえ出てこない。 また瀬長の身近なところにいながら、後に沖縄から離れた国場幸太郎のことなど、もうちょっと筆を割いてほしかったところである。 初出が『週刊ポスト』連載ということにも制約されたと察する。この週刊誌の読み手は主に男性サラリーマンだ。通勤電車の中などでスラスラ読める読み物、ということが編集サイドから求められたのだろう。 作者は『南風に乗る』の前に、やはり『週刊ポスト』誌上で『太平洋食堂』という作品を連載した。これは大逆事件に関わった人びとを描く。酔流亭はこれも床屋の待ち時間に連載を一度か二度読んだだけで全編は読み通していない。 『太平洋食堂』が単行本になった直後のインタビュー記事がネットに出ている。 上のネット記事には作者の写真も載っていて、胸に<不屈>というバッジ。言うまでもなく瀬長亀次郎にちなむ。酔流亭も瀬長を顕彰する那覇市の不屈館で同じバッジを買った。インタビューは『南風に乗る』の連載が始まる一年ほど前だが、もう沖縄の歴史や瀬長のことを調べていたのだろう。 このテーマ(沖縄の人びとの闘い)を手放さず、さらに深めていってほしいと思う。 なお南風は<まぜ>と読むそうだ。
by suiryutei
| 2023-11-08 09:19
| 文学・書評
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