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8月はもう更新しませんと一昨日の更新記事に宣言?したところですが、新聞『思想運動』9月1日付が思ったより早く昨日届き、その最終面(文化面)に酔流亭が書いた記事が載っています。7月末に出た雑誌『労働者文学』第93号の<読みどころ>について執筆を依頼されました。 よって前言を翻し、その全文を転写します。 労働者文学会が発行する雑誌『労働者文学』の第93号が7月25日に発行された。 総評傘下の労働組合・文学サークルの参加者を中心に労働者文学会議が結成されたのが1979年。その年、雑誌『労働者文学』も創刊された。1988年には労働者文学賞が創設され、今年で36回目を数える。労働者文学会議は2006年に名称を労働者文学会に変更。『労働者文学』は2021年までは7月・12月と年二回発行されてきたが、22年からは年に一度、7月発行となった。そのぶん一冊のボリュームは増し、21年7月刊の89号は108ページだったのが最新の93号は166ページある。定価は1000円から1300円に上がった(送料込みの場合は1500円)けれども、分量の面では値上げ分は十二分に補っていると思う。 では内容はどうか。今年の労働者文学賞受賞作品の掲載に前半はあてられている。 経済のグローバルな展開にとって物流業はいよいよ重要であり、そのカナメとなるのは海運だ。日本の貿易量の99.6%はそれが担う。小説部門で入選した『印字された内容』(岡田周平)の主人公は、海上コンテナの運送に関わる企業で働いている。大量爆発の可能性がある危険物のコンテナ詰めがルーティン化したパソコン打ち込みだけで実態はほぼノーチェックで行なわれていることに気づくが、それを告発しようとして、あっさりと握りつぶされてしまう。今これを書いているつい数日前(8月9日)、中国寧波市の港に停泊中の台湾籍貨物船で積荷のコンテナが爆発する事故が起きたばかり。今日の労働の、また雇われ方の危うさが覗われて、なんともアクチュアリティのある作品だ。「この若い才能は顕彰に価する」(選考委員、鎌田慧氏の『選評』)。 今年は佳作も小説部門で2編、詩部門は3編選ばれた。それぞれに質の高い作品である。あえて言及したいのは選外であったルポルタージュ『供養塔を巡る人々―埼玉県熊谷関東大震災での朝鮮人虐殺』(嶋田道雄)だ。都内での殺戮を逃れ中山道を歩いて熊谷市に避難してきた朝鮮人57人全員が地元の自警団に殺された。供養塔の建立と慰霊に尽力した人びとを通じて虐殺の実態を明らかにしたものである。全文が掲載されているので、受賞作品群と併せて是非読んでほしい。 さて受賞作品はすべて文学会の会員外によるもの。会員はこの頃あまり賞に応募しない。新人に出てきてほしいと遠慮しているか。93号の後半は、その会員たちによる寄稿が並んだ。平和教育の実践報告、書評、紀行、詩、随筆、小説と多彩である。あちこちのページに配された川柳が山葵を利かせる。私が心打たれたのは、『戦場に立った一人のキリスト者と戦争の記憶―渡辺良三歌集「小さな抵抗―殺戮を拒んだ日本兵」』(小林孝吉)が紹介する一キリスト教徒の生き方だ。中国人捕虜虐殺の命令を、一兵士である彼は拒否するのである。先述の文学賞入選『印字された内容』には「敗北と退廃の結末」(選考委員、楜沢健氏)という指摘もあった。それを乗り越えていく手がかりをその抵抗から掴めないだろうか。 ![]() 目次の前半です。 ![]() 後半は、こう。 ![]() 新聞『思想運動』の一面。 ![]()
by suiryutei
| 2024-08-31 09:29
| 文学・書評
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