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先月27日が最終回だったNHK朝ドラ『虎に翼』について『伝送便』10月号に短い感想を書いたので、転写します。 暑い盛りだった八月の或る夕、神田の蕎麦屋〔まつや〕に寄った。ちょうど満席で、入口で少し待つ。やはり入店を待っていた家族連れのうち小さな男の子が 「トラちゃんの店、見てくる!」 と駆け出して行った。 <トラちゃん>とは、九月まで放送のNHK朝ドラ『虎に翼』で伊藤沙莉が演じたヒロイン寅子(ともこ)の愛称だ。ドラマでヒロインらが行きつけの甘味店〔竹もと〕が、〔まつや〕のすぐ近くに実在する汁粉屋〔竹むら〕に、外観も中の造りもそっくりなのである。初め〔竹むら〕でロケしたかと思ったくらいだ。実はそっくりのセットをスタジオに造ったらしい。 この朝ドラには私も好感を持った。なにしろ四月一日放送の初回は、憲法十四条の朗読で始まったのだ(ナレーターは女優の尾野真千子)。「すべて国民は、法の下にあって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。・・・」 ヒロインのモデルとなった三淵嘉子は女性差別の壁を突き破って女性弁護士・判事の草分けとなった人だから「差別されない」を謳う十四条が前面に出るのは当然。しかし、同条だけでなく現憲法総体を作り手たちが大事に思っていることは、ドラマをずっと視てくればよくわかる。もっとも、現憲法に対しては、戦争への反省はあるけれど植民地支配責任の自覚には乏しいのではないか、という不満がないではない。 ここで重要なのは、ヒロインの大学の同級生で朝鮮からの留学生である崔香淑(愛称ヒャンちゃん)の造形だ。ハ・ヨンスという韓国の女優さんが演じた。彼女の存在を通じて、心ある視聴者なら朝鮮を植民地支配して虐げた日本の加害責任に思いが至ったはずである。関東大震災における朝鮮人虐殺についても触れていた。 ヒャンちゃんには実在のモデルはいないようだが、モデルがいる登場人物は少なくない。松山ケンイチが扮した裁判官、桂場等一郎も〔竹もと〕の常連で、仏頂面をしながら決まってアンコの串団子を食べている。モデルは最高裁判所の第五代長官だった石田和外である(任期は一九六九~一九七三)。だから彼が指揮を執った青年法律家協会問題(進歩的な若手裁判官のパージ)も描かれた。そうした反動化とヒロインらの対決がドラマ最終盤のテーマになりそうだが、最終回(九月二七日放送)を視ずとも(この原稿を書いているのは九月一七日)、その結果を私たちは知っている。私も労働関係の裁判傍聴で最高裁の門をくぐったことがある。あの厳めしい建物は、残念ながら人権の砦ではなくて日本の反動化を象徴しているように思う。 史実はそうとして、さてドラマはどう決着するか。本誌九月号コラム【伝書鳩】でも森川直只さんが言及されていたように、多くの人に関心を持たれた作品だ。最終回まで視届けてから、また論じてみたい気がする。
by suiryutei
| 2024-10-03 06:44
| 映画・TV
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