新人事制度 大阪での報告①~③
記事ランキング
最新の記事
タグ
労働(124)
最新のコメント
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2025年 07月 2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
一昨日、強風のなか上りの常磐線車内で読んだ佐多稲子の短編小説『煙草工女』は 「昼前であった。事務所の中は暖かい三月の陽がガラス戸越しに射していた。」 と書き出される。 そのあとすぐ、煙草工場で働く女主人公は、同じ工場で働く夫が警察に挙げられたことを知らされる。 この夫婦は左翼活動をしており、作品の終わりには(1929.2)という年月が入っているから、夫はおそらく前年1928年3月に起きた3.15事件で捕まったのであろう。3.15事件は共産党員およびそのシンパに対する大規模な弾圧事件で、全国で数千人が検束、約300人が検挙された。 そうして夫が刑務所にいるあいだに、主人公は女児を出産する。 すると、これは中野重治『春先の風』と対になるような作品だ。 『春先の風』に登場する若い夫婦も、3.15事件で警察にひっぱられる。 この夫婦にも女の子の赤ン坊がいた。この子は、母とともに警察の保護檻に入れられているあいだに身体に変調をきたし、亡くなってしまう。生後八か月の命であった。 『煙草工女』では、出産する前日まで工場で働いていた主人公は、予定日より10日早く産気づくと、40分かかる道を独りで歩いて産婆のところにたどり着く。 彼女へは後日、救援会から5円の金が届けられた(1928年の5円って、現在ならいくらぐらいだろう)。刑務所に面会に行くと、夫が着て現われた白地のゆかたも救援会から差し入れられたもの。厳しい弾圧の中にあっても仲間同士の支え合いが続いていたことが覗われる。 それにしても、一昨日あんなに強い風が吹かなければ、この小説は読まないままだったろう。強風で電車が動かなくなることを覚悟して、その場合に手持無沙汰にならないよう持って出た文庫本に収められていたから。 その文庫本は、去年の今ごろ、高齢になって施設に入ることになった年上の知人の蔵書から譲ってもらった何冊かのうちの一冊である。 なお、いま去年2月の過去記事をざっと眺めて、去年の「春一番」は2月15日に吹いたことに気づいた。翌16日のブログ記事はそれを話題にしているから。 ちょうど一年前である。
by suiryutei
| 2025-02-15 08:28
| 文学・書評
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||