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労働者文学会のホームページ扉のコラムにいま載っている文章です。昨日(16日)から今月いっぱい掲載されます。 全文をここでも写しますが、労文HPに行かれて、そこで読んでいただきたいというのが書き手の希望。そして同HPの他のパートも覗いていただければ嬉しいです。 蕎麦掻き 東京でも桜が満開となった4月初めの某夜、郵便局で働いていた頃の仲間たちと神田の蕎麦屋で飲んだ。菊正宗の熱燗。5人連れだったので肴はあれこれ少しずつ注文して分け合う。鰊の棒煮、卵焼き、焼き鳥・・・。蕎麦がきもたのむと、塗り物の湯桶が運ばれてきた。熱い湯が満たされ、蕎麦粉を掻いたのが浮かんでいる。 大江健三郎を誘って神田の蕎麦屋に入り、蕎麦がきを食べた話をむかし安岡章太郎が書いている(雑誌『文藝』1974年2月号)。 「そばがきといふのは、私は子どもの頃から何となく貧乏臭い気がして好きではなかったが、大江氏が食ひたいといふので、付き合って食ってみると、これがじつにウマかった。」 安岡は店名を明記していないが、われわれが行ったのは、おそらく同じ蕎麦屋である。そして蕎麦がきというのはじっさい貧乏くさいようで実にうまい。そば切りにする前の、鉢で捏ねられた蕎麦のかたまりだ。 安岡のその文章はもう半世紀前で、安岡章太郎も大江健三郎も今やこの世の人ではない。私が最近読んだ中で蕎麦屋が登場するのは津村記久子の小説『水車小屋のネネ』(2023年)だ。題名にある水車小屋は山あいの、近くを川が流れる蕎麦屋に併設されていて、水車の動力によって回る臼で蕎麦の実から蕎麦粉が挽かれる。小説の中に蕎麦についての蘊蓄などいっさい出てこないが、きっと美味いに決まっている。蕎麦がきが出される場面もあった。 ネネというのは、水車小屋に棲むヨウムという鳥の名。オウムの一種で賢い。18歳と8歳の姉妹が事情があって家を出、姉は蕎麦屋で働く。彼女たちをめぐって1981年から2021年まで40年間のクロニクル(年代記)のような作品だ。 読後感が爽やかなのは私が蕎麦好きだからだけではないと思う。 ![]() 半月ごとに執筆者が替わるこのコラム、前々回は稲田恭明さんがパレスチナ問題、前回は黄英治さんが朝鮮問題を論じた。比べると今回の酔流亭文は軟派過ぎて恐縮する。 それから楽屋裏を明かすと、大江健三郎と神田の蕎麦屋で蕎麦掻きを食べたらじつにウマかったという安岡章太郎の文章(雑誌(『文藝』1974年2月号掲載)は丸谷才一の『食通知ったかぶり』中〔利根の川風ウナギの匂ひ〕という章から引いた。タイトルの通り、その章で丸谷は鰻とか蕎麦とか、江戸の名物料理をあれこれ食べ歩いているのだ。 ![]()
by suiryutei
| 2025-04-17 08:26
| 文学・書評
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