新人事制度 大阪での報告①~③
記事ランキング
最新の記事
タグ
労働(124)
最新のコメント
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
昨日(25日)の午後NHKBSで放映された『シャイアン』についてウィキペディアを調べると冒頭こう書かれている。 しかし『駅馬車』(1939年)における悪玉は、ジョン・ウェイン扮する主人公リンゴ・キッドの弟を卑怯な方法で殺害した白人三兄弟である。リンゴはこの仇兄弟がいる町に向かう駅馬車に乗り込んで復讐に赴き、その旅の終盤でアパッチ族の騎馬部隊と遭遇して戦闘になる。銃の名手であるリンゴがライフルでアパッチを次々撃ち殺す場面は観ていて不快だが、先住民をことさらに悪玉にしているわけではない。 『アパッチ砦』(1948年)のように、功を焦る騎兵隊の司令官より先住民の族長のほうが人間的に立派に描かれた作品もある。先住民を敵役にして米国陸軍(騎兵隊)を賛歌する映画もたしかにいくつか作っており、晩年のフォードにはそれでよかったのかという思いがあったらしい。1964年制作の『シャイアン』はジョン・フォード(1894-1973)にとって創作活動の一番最後のほうの作品となった。『怒りの葡萄』(1940年)や『わが谷は緑なりき』(1941年)のような労働者的な名作の一方で米海軍に協力して戦争を宣伝する映画も撮った人だが、最後にいい仕事を残したと思う。 (『怒りの葡萄』) またウィキペディアを、今度は映画の『シャイアン』ではなく<シャイアン族>という項を覗いてみる。 シャイアン族は1868年に米政府と結んだ条約によってオクラホマの居留地に強制収容される。管理局から狩猟を禁じられた上に食料配給をごまかされ、飢餓状態に陥った。そうした中で1878年、居留地を脱出して故郷のワイオミングに向けて1900㎞の距離を絶望的な移動を開始する。 映画はこの史実に沿っていることがわかる。居留地に収容されている間に1000人のシャイアンが病気と飢えで200人余に減ってしまったと映画の中の台詞にあった。 脱出行は騎乗だけでなく、女性や子どもの多くは歩行である。ところが、それを追う騎兵隊は騎乗の職業的戦闘集団であるのにシャイアンの一行になかなか追いつかない。季節が移っても追跡は延々と続く。 これは不自然な設定のように思われた。ウィキペディアには騎兵隊による追跡のことまでは書いていないので勝手に推測すると、騎兵隊でリチャード・ウィドマークが演じる主人公であるアーチャー大尉は映画のために創作された人物であろう。彼はシャイアンの苦境に同情し政府の先住民対策に憤ってはいるものの、軍人として命令にしたがって追跡を続ける。その葛藤が映画の主題であり、長い追跡行を通して「人間としてそれでいいのか」と悩み続ける。ジョン・フォードその人が投影されているように思う。 いや、観る我々自身が「それでいいのか」を自問しなければ。いま現在、イスラエルがガザで行なっているジェノサイドを「同じ西側社会だから」とわれわれは傍観=黙認しているのである。 映画の終盤、二つに割れたシャイアンの一方は寒さと飢えにとうとう力尽き、騎兵隊の某砦に投降する。ところが騎兵隊の司令官は「これが政府からの命令」と、元の居留地に戻ることを強要する。投降した日の夜は一行を倉庫に閉じ込め、水も食糧も与えず、暖をとるための薪さえ取り上げる。夜は氷点下10℃に下がる極寒だというのに。 アーチャー大尉はついに目を背けることができなくなって単身ワシントンに向かい、政府高官に直訴、それが事態の打開につながるというかたちで映画は結末する。 実際の歴史においてはどうであったのだろうか。 酔流亭の高校の恩師、綿引弘先生の著書『世界史の散歩路』(聖文社、1989年刊)29章「アメリカ合衆国の繁栄を支えた人びと」にこんな記述がある。 ・・インディアンの推定人口には諸説あるが、1600~1845年の間は、およそ1100万人余と考えられていたが、1870年には実に2万5731人に激減した。 (252ページ) 上の図は『世界史の散歩路』の挿絵。チェロキー族は文字を創出し文盲もほとんどいないという高い文化を持っていたが、1838年、1万2000人が厳冬にオクラホマの居留地まで1300㎞を歩かされ、4人に1人の死者を出した。先住民はその道を「涙のふみわけ道」と呼んだという。 ※雑誌『労働者文学』No.90(2021年12月刊)に掲載された文中、ジョン・フォードの映画に触れた箇所があるので、貼り付けます。
by suiryutei
| 2025-04-26 09:13
| 映画・TV
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||