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NHKBSで3月ごろ放映された『天国と地獄』(黒澤明監督、1963年)を録画しておいて、この連休にようやく視た。 半世紀くらい前に一度観ている。映画館で観たのか、やはりTV放映でだったかは憶えていない。 製靴会社の重役の専属運転手の息子が、重役の同年齢(小学生)の息子と間違われて誘拐される。間違いとわかっても誘拐犯は身代金の要求をやめない。自分の息子ではないからといって見殺しにはできず、三船敏郎が扮する重役は私財をなげうって(3000万円!)要求に応じ、子どもは無事返ってくる。これが前半。 後半は、仲代達矢が演じる警部率いる捜査陣が誘拐犯人を追い詰めていく。犯人を演じるのは山崎努である。なにしろ62年前だから三船も仲代も山崎もみんな若い。 捜査陣の中に「ボースン」というあだ名で呼ばれる刑事がいる。ボースンとは船員言葉で甲板長とか水夫長という意味である。船では甲板の上での作業はボースンが仕切る。石山健二郎という役者さんが演じていた。ツルツル頭にガッシリした体躯で、海坊主のよう。この役(田口部長刑事)にボースンというあだ名をつけたのは、配役が決まってからであったかもしれないね。もしかしたら坊主頭→ボースン? (右から3番目の坊主頭がボースンこと田口部長刑事) 映画の舞台は横浜だから、船員言葉を混ぜることで港町らしい雰囲気を出したかったということもあろうが。 酔流亭がボースンという言葉に聞き覚えがあるのは、葉山嘉樹の小説『海に生くる人々』(1926年)にも登場するからだ。こちらは室蘭と横浜を行き来する3000トンほどの汽船で働く人々の物語であるから、ボースンはあだ名ではなく本物の甲板長である。 『天国と地獄』の脚本を書いた人(黒澤のほか菊島隆三、小国英雄、久坂栄二郎が加わって4人による共同脚本だ)の中に『海に生くる人々』を読んでいた人がいて、ボースンを持ってきたのかもしれない。酔流亭は70年生きてきて『海に生くる人々』と『天国と地獄』以外文芸作品の中でこの言葉が使われているケースを知らないのだから、こんな想像をしたってあながち見当違いではないかと思う。 さて、この両作はどちらも傑作と言っていいのだろうが、『天国と地獄』のほうはちょっとコワイところもある。若き仲代達矢率いる捜査陣は、誘拐だけでは10数年の懲役刑にしかできないからと、容疑者の目ぼしはついたのにすぐには捕まえず泳がす。その間に若き山崎努は殺人を犯す。捜査陣の思惑通り?彼は死刑に処されるけれど、警察にこんなことさせていいのか。 ところで、たった今、『海に生くる人々』について書いた自分の過去記事(下に貼り付けます)を読み返して気づいた。中野重治の自伝的小説『むらぎも』に葉山嘉樹は<田口>という名前で登場する。『天国と地獄」におけるボースンの本名は田口だ。田口部長刑事。 これってたまたま? それとも脚本家の「気づく人は面白がってくれ」という悪戯?
by suiryutei
| 2025-05-04 08:19
| 映画・TV
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