聴き逃がし配信

昨日の午後、車で外出した。出先での用事が済んだのが午後2時で、車に戻ってカー・ラジオを点けるとNHKFM『クラシックの庭』という番組がちょうど始まるところである。

番組冒頭にかかったのはリストのピアノ協奏曲1番。奏者はスヴャトスラフ・リヒテルとロンドン交響楽団。

リストは作曲だけでなく自ら弾いてピアノの希代の名手だったそうだし、リヒテルといえば20世紀において「世紀のピアニスト」と称賛されていた。しかしリヒテルがリストを弾くのを酔流亭は聴いた憶えがない。高校生のころ『フランツ・リスト 愛の夢』という映画が作られて（ソ連・ハンガリー合作、）その映画に流れる曲はリヒテルが弾いているという話を聞いたことがあるけれど、映画は観そびれた。もっとも、いまネットで調べたら、その映画においてリストの曲を弾いていたのはハンガリーのピアニスト、ジョルジュ・シフラ。リヒテルはベートーベンとショパンの曲を担当したのだという。

フランツ・リスト 愛の夢 : 作品情報・キャスト・あらすじ - 映画.com

ともかく、これはカー・ラジオではなく、じっくり聴きたいと思った。

帰宅して『クラシックの庭』の放送が終了する午後3時50分を待って、午後4時をまわったところでパソコンで同番組のHPを開き、＜聴き逃がし配信＞をクリックする。聴き逃がし配信は、番組が終了した時点から一週間以内なら、こうすればいつでも聴けるのである。

NHKがこのサービスを始めたのは何年前からだろう。酔流亭はパソコン関係の扱いが苦手なので、操作が面倒なんじゃないかと敬遠して、つい最近まで利用していなかった。しかし、じつに簡単なのだ。上に書いたように、当該番組のHPを開いて＜聴き逃がし配信＞とあるところをクリックすればいい。

そうして思うのは、郵便局で働いていた頃にこのサービスがもう始まっていたらよかったのになあ、ということだ。

泊まり勤務が多かったから、午後の2時台、3時台というのは家に居ても寝ていることが多かった。NHKFMのその時間帯は、番組タイトルは数年おきくらいに微変化するようだけれど、ずいぶん前からクラシック音楽が流れることに決まっている。

便利になったし、酔流亭もまあ穏やかな引退生活の日々を送っているということである。いつまで続くかわからないけれども。

（これがリヒテルさんですね。わが家にある彼の2枚組LPのジャケットから撮影。このLPではシューマンとかを弾いている）

ところでリヒテルといえば、津村喜久子『水車小屋のネネ』における主人公姉妹のお姉さんのほうの理佐と結ばれることになる青年・聡が姉妹が暮らす町にやってくるときどこかでリヒテルのCDを買う場面があったと記憶する。楽曲はたしかヘンデルの何かであった。あの長編小説に酔流亭が好意を持つ理由の一つだ。

蕎麦屋も舞台になるクロニクル（年代記）～津村記久子『水車小屋のネネ』 : 酔流亭日乗

リヒテルのことは【いてんぜ通信】2022秋号（第7号）にも書いたことがある。長い文章ですが、その後半に出てきます。