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韓国のハン・ガンさんが書いた今のところいちばん新しい小説『別れを告げない』の初めのほうに、こんな描写がある。 ・・私は去年の秋にインソンの家で会った小さなインコたちのことを思い出した。その一羽が、コンニチワ、と私に声をかけた。・・(略)・・もっと不思議だったのは、その鳥がまるでインソンの質問を理解しているみたいに、「ソウ」とか「ウン」とか「チガウ」とか「シラナイ」といった返事を交差させながら、かなりもっともらしい会話を続けていたことだ。・・ (58ページ) インソンというのは、この小説の語り手である女性作家キョンハの親友。不慮の事故に遭って緊急入院したインソンに、済州島の家で彼女と暮らしているインコの世話をキョンハが頼まれたことが物語のとば口になっているのだ。 鳥と人間とのこんな会話もどきに、酔流亭はなんだか既読感めいたものがある。『別れを告げない』を読み始めるより少し前に読んでいた『水車小屋のネネ』(津村記久子)においても、オウムの一種、ヨウムという鳥が主人公である理佐と律の姉妹を相手に、似たような会話もどきをやってみせるからだ。本の題名にある<ネネ>とは、そのヨウムの名前。 それで、いまインコとオウムの違いをネットで検索してみると、AIが答えて言うに、冠羽(かんう。くちばしの付け根から頭頂部にかけて生えている羽のこと)が無いのがインコで、あるのがオウムだということである。ただし、冠羽があるのに名前の中にインコと入っている種類のオウムもいるらしい。ややこしいが、つまりインコもオウムもどちらも似たようなものということだろう。 なお『水車小屋のネネ』は毎日新聞夕刊に2021年7月1日から22年7月8日まで連載され、23年3月に単行本になった。『別れを告げない』の<あとがき>には2021年初秋とあるから、それが脱稿した時季だろう。斎藤真理子さんによる日本語訳は24年4月出版。つまり二つの作品はほぼ同じ時に別の言語(日本語と韓国語)で書かれた。どちらか一方が他方からインスピレーションを受けたということではないだろう。それぞれが独自の発想で、人間と会話もどきをやる鳥に自作の中で重要な役を与えているのである。 いま書いたことは『別れを告げない』の周辺的な話であって、この小説の核心にはなんら触れていない。『別れを告げない』は、自分が所属する社会の現代史の闇に、暴力に、作者が自分の存在をかけて対峙しようとした作品である。こういう作品に向かって何か書くにはこちらも覚悟がいる。 ※労働者文学会HP扉のコラムでは『蕎麦掻き』というタイトルで『水車小屋のネネ』に少し触れています。
by suiryutei
| 2025-05-14 08:15
| 文学・書評
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