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小説『別れを告げない』において、作者ハン・ガンとかさなるのは語り手である小説家キョンハだが、彼女に劣らず重要な存在は、キョンハの親友インソンである。キョンハが済州島4.3事件と向き合うにあたっては、インソンが導き手となるからだ。1948年に起き、少なく見ても2万5000人~3万人の島民が虐殺された4.3事件。インソンの両親はその生き残りだったのだ。 2人が出会った初めは仕事上のパートナーとしてであった。ライターとカメラマンという関係である。しかしインソンは写真家としての仕事のほかに記録映画も制作していた。 「大学で写真を専攻したインソンは20代後半からドキュメンタリー映画に関心を持ち、生計の助けにならないその仕事を粘り強く10年続けた。もちろん、稼ぎになる撮影の仕事も手あたり次第にやっていたが、収入があるたび自分自身の仕事につぎ込むので、いつも貧乏していた」(30ページ)。 そのようにしてこれまでに作った映画は3本。 最初の1本はベトナム戦争に派兵された韓国軍が現地で手を染めた性暴力事件のサバイバーたちにインタビューし、最後の1本は自身をも取材対象として済州島4.3事件を扱った。 その間に撮った1本は「1940年代の満州で朝鮮独立軍に入って活動していたという、ある認知症のおばあさんの日常を扱ったものだった」(31ページ)。 この「1940年代の満州で朝鮮独立軍」というのは、作中ではそう表現はされていないが<抗日パルチザン>のことであろう。そうした取材体験を経て、インソンは自身の歴史そのものである済州島4.3事件に迫っていく。その前の二つの映画について『別れを告げない』の中ではほんの僅か触れられるだけだ。しかし、そういう映画を撮ったインソンを通じて、読み手は作者ハン・ガンの問題意識を知ることができる。最初のベトナムでの性暴力は、自国の加害の歴史にも目を背けない、ということであろう。 満州における抗日パルチザンは、それを指導したとされる金日成が朝鮮の共和国のほうでは神格化されているので、韓国では触れるのがなかなか難しいのではないかと推測する。それだけに、こうしたかたちで自らの問題意識を明らかにしているのは立派だと思う。そして日本が朝鮮を植民地支配することで、かの地の人びとに過酷な独立運動を闘うことを強いたことに、日本の私たちは思いを致さなくてはならない。 20日更新記事にも書いたように『抗日パルチザン参加者たちの回想記』読書会に酔流亭は参加しています。 次回は下のように6月8日。 6月8日(日)午後1時15分~4時半 東京・赤羽北区民センター(JR北赤羽駅徒歩1分)第1和室 参加費 500円(要予約) 主催 前田年昭 電話080-5075-6869 tmaeda1966516@gmail.com ![]()
by suiryutei
| 2025-05-26 08:01
| 文学・書評
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