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ハン・ガンさんの小説『別れを告げない』についての書評を『伝送便』6月号に寄稿しました。書評と言うには短い記事ですが。 『少年が来る』(本誌去年一二月号に書評掲載)で光州事件を描いたハン・ガン氏(韓国、二〇二四年ノーベル文学賞受賞)が、最新作『別れを告げない』では済州島四・三事件の記憶と向き合っている。 済州島は朝鮮半島の南方八〇㎞先の海上にある。四・三事件とは一九四八年、米軍政下で、すなわち第二次大戦後進駐してきたアメリカ軍の使嗾と黙認のもとで、韓国軍兵士・警察・民間右翼によって行われた住民大量虐殺である。この小説では二〇〇三年に出た〔真相調査報告書〕に従って犠牲者数を二万五千~三万人としているが、一九八八年に東京で開催された〔四・三事件四〇周年追悼記念講演会〕では七万~八万人が殺されたとする発言者もいる。ともかく当時人口が三〇万人たらずだった島で恐るべきジェノサイドが引き起こされたのである。島民の一部が蜂起して警察支所や右翼団体事務所を襲い、一四名の犠牲者が出たことが事件の端緒で(蜂起した日が四月三日)、それを逆手にとって米軍政や政府に抵抗する人びとを、そうでない人びとも巻き込んで皆殺しにしようとしたのは、現在ガザでイスラエル軍がやっていることを思わせる。 語り手である女性作家キョンハには『少年が来る』を書きあげた後の作者ハン・ガンとかさなるところがあるようだ。あの凄惨な暴力は光州事件(一九八〇年)においてだけ行使されたのではなかった。重要なのはキョンハの親友インソンの存在である。済州島出身の彼女の両親は四・三事件の生き残りであったことが、読み進むにつれてわかってくる。 とっつきやすい小説ではない。初め私は読み通すのにずいぶん時間がかかった。作者は自分が所属する社会の現代史と自己の存在をかけて対峙しているのである。これはくり返し読まなくてはならない。ことに私たち日本人は。なぜか。 「日帝時代に特高刑事だった裏切り者がそのまま居残って解放前と同じような拷問をやっている」(一九七ページ)。その残酷さは日本の天皇制ファシズムが朝鮮半島に残していったものなのだ。沖縄戦のあと日本軍は済州島を最終決戦の地と定め巨大軍事要塞化を進めた。日本の降伏が遅れれば沖縄に続く玉砕の島になっていたろう。日本の罪深さに改めて背筋が寒くなる。白水社刊、二五〇〇円。 ![]() ※関連して
by suiryutei
| 2025-05-31 06:26
| 文学・書評
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