新人事制度 大阪での報告①~③
記事ランキング
最新の記事
タグ
労働(124)
最新のコメント
カテゴリ
最新のトラックバック
以前の記事
2025年 07月 2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 more... ブログジャンル
画像一覧
検索
|
NHK朝ドラ『あんぱん』の今朝の放送では、妻夫木聡扮する謎の上等兵・八木がこれまで何かと嵩(たかし)をかばってくれたのは八木もまた井伏鱒二の愛読者だったから、と明かされた。 嵩が入営した日、所持品に井伏の『厄除け詩集』があったのを古兵たちに見咎められたとき、こんな軟派な奴は制裁してやるといきり立つ他の古兵たちとは逆に、八木は「こいつ、俺と同類」とばかりシンパシィを持ったらしい。 もっとも八木が謎めいているのは他にもっと深い理由がありそう。それが明かされていくのは来週以降のようだ。 二人の会話の中で『厄除け詩集』を<井伏の詩集>と呼ぶのは、厳密に言えばちょっと違う。前にも書いたように、あれは中国の古い詩を井伏がかなり自由に意訳したもの。それを井伏は<厄除け>と戯れた。井伏が書いた詩、というわけではない。 さて、その井伏鱒二も登場する『文学する中央線沿線』(ぶんしん出版、2023年刊)を書いた矢野勝己氏が高校の同期生であることは前にも書いた。 旧友の著作だから宣伝するわけではないが、これは好著である。中央線の新宿以西の駅に沿って、その地に縁のある文学作品、その著者たちが紹介されていく。中野、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪・・・。 酔流亭はいま吉祥寺まで読み進んできたところだ。吉祥寺では桐野夏生『抱く女』への言及が、酔流亭にはことに心に留まった。 写真の誌面に<一九七二年の吉祥寺>とある。その年は11月に早稲田大学の構内で第一文学部二年生だった川口大三郎さんがリンチを受けて殺害されている。 そうして小説の主人公の兄は内ゲバで殺害されたという設定である。 瀬戸宏さんが主宰する〔川口大三郎君追悼資料室〕に行ってみた。川口事件が反映されている文学作品がそこには網羅されているからだ。 『抱く女』も蒐集されていた。 酔流亭自身は『抱く女』はまだ読んでいない。瀬戸さんによる作品紹介によれば、川口さん虐殺事件を明らかにモデルにしたと思われる殺人事件が小説には登場し、主人公・直子の兄というのは、リンチして殺した側の政治党派の活動家であった。事件のすぐ後、今度は別の政治党派に襲われて、その兄が死亡するのである。現実には川口事件の後しばらくは、そうした殺人事件(川口さんを殺した党派の活動家が別の党派に襲われて殺される)は起きていないから、こちらの殺人のほうは小説の中での架空の出来事だ。 瀬戸さんは読後感をこう述べている。 「・・読み終わって二十歳の若い女性の青春遍歴を描いた作品としてはある程度の力作だと思いました。多少事実とは違うにしても、川口君虐殺が早稲田大学以外の学生にも記憶に残る事件であったことを示している点で貴重です。」 ※川口さんの事件をめぐってこのブログの過去記事としてはたとえば
by suiryutei
| 2025-06-13 09:24
| 文学・書評
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||