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NHK朝ドラ『あんぱん』の今朝の放送では嵩(たかし、演・北村匠海)は高知の新聞社を退職して東京に出てくる。のぶ(演・今田美桜)に会うためだが、二人が一緒に暮らすようになるのは、今朝の放送を視るかぎりではもう少し先になりそう。 時代は、高知でも大きな被害が出た昭和南海地震(1946年12月)の直後だから、1947年に入ったばかりだろうか。そのころ東京ではまだ戦災孤児が多かった。嵩はいつもボンヤリしている人なので、上京早々、日ごろ手放さない詩集を孤児の一人に盗られそうになる。その孤児は八木がよく面倒をみている児だったので戻ってくるのだが。 妻夫木聡が扮する八木は嵩と同じ兵営だったのである。このあたりの都合の良すぎる巡り合わせは、ドラマだからまあしょうがないか。 さて、その盗られそうになった詩集が何であるか、セリフでは語られないし表紙がアップで映されることもない。今朝の放送だけではわからない。しかし、この朝ドラをずっと視てきた人なら、ああ、あれかとすぐ合点するだろう。 井伏鱒二の『厄除け詩集』である。 それに触れた過去ログを貼り付けておきますね。 ふり返れば、兵営で上官からも一目置かれる謎の上等兵だった八木が嵩を何かとかばったのは彼も井伏文学の愛読者だったから。さらに、のぶのほうの一家にパンの焼き方をかつて伝授した流れ者のパン職人・ヤムさん(演・阿部サダヲ)も『厄除け詩集』中の名吟「勧酒」にある一節 <花に嵐のたとえもあるぞ サヨナラだけが人生だ> をよく口にしていた。 井伏『厄除け詩集』はこの先もドラマの結末まで、貴重な小道具として使われていくかな。 下の写真は我が本棚にある〔井伏鱒二自選集〕(1986年、新潮社刊、全13冊)の一冊。酔流亭はこれを含めて3冊しか持っていないが。 水島朝穂・早大法学部名誉教授がご自身のブログの最近の更新記事で『あんぱん』について論じている。憲法学者による朝ドラ論として面白い。
by suiryutei
| 2025-07-28 09:05
| 文学・書評
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