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去年の読書の中ではハン・ガンの作品とパーシヴァル・エヴェレットの『ジェイムズ』という小説がいちばん印象に残ったということを何度か書いてきた。ハン・ガン作品について書いたことの一部は昨日の更新記事にも貼り付けてある。『ジェイムズ』の読後感は、たとえば〔いてんぜ通信〕去年冬号への寄稿の後半に書いた。 『ジェイムズ』を書いたパーシヴァル・エヴェレットの新刊が今年1月に出ている(『消失』、集英社、1月10日刊)。 新刊と言っても、作者が住む米国では2001年に刊行されている。おそらく日本では去年刊行された『ジェイムズ』が注目されたので、それで作者の旧作も出版の運びとなったのであろう。 マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』のスピン・オフ的作品である『ジェイムズ』では、語りてはハック少年の相棒ジムである。黒人逃亡奴隷ジムはここにおいてトウェインの手を離れて、エヴェレットによってジェイムズとして新たな生命を吹き込まれていた。そのジェイムズにはウィリアム・ブラウン(1814-84、奴隷制廃止論者にして小説家)が投影されているのではないかというのが、酔流亭の勝手な推測である。 では『消失』の主人公セロニアス・エリスン(愛称モンク)はどうか。1955年生まれで、人種が黒人で、小説家であるとともに大学で文学を教えているという彼には、作者パーシヴァル・エヴェレット自身がかなり投影されていると思われる。エヴェレットは1956年生まれで、彼も小説を書くとともに大学教授である。 もちろん創作であるから主人公=作者ではない。医師である姉が妊娠中絶反対の過激派に撃ち殺されたり、金の必要があって書いた、自分としては全く唾棄すべき小説が意外にも権威ある文学賞を受賞してしまったりといった、作品中のエピソードは、似たようなことはあったのかもしれないが現実に起きたことではないだろう。 ただ「マーラーとアレサ・フランクリンとチャーリー・パーカーとライ・クーダーを、レコードとCDの両方で聴く」(5ページ)といったセロニアス・エリスンの嗜好は、おそらく作者エヴェレット自身のそれではないか。 そうだとしたら嬉しい。酔流亭もマーラーとチャーリー・パーカーはときどき聴くし、ライ・クーダーの音楽は最近知ったばかりだが、なかなかいいと思う。アレサ・フランクリンはこれから聴く機会を増やそう。 つまり酔流亭は、パーシヴァル・エヴェレットという文学者にかなり興味を惹かれているのだ。『消失』も、読み込んだ上で感想を書けたら書きたいと思っている。
by suiryutei
| 2026-03-15 09:02
| 文学・書評
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