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日本統治下の1938年の台湾を舞台にした小説『台湾漫遊鉄道のふたり』が、今年の国際ブッカー賞に選ばれたことを、つい先ほど朝日新聞朝刊のコラム〔天声人語〕を読んで知った。 先日の米中首脳会談でも台湾のことがチラチラしていただけに、今日の時事を絡めてこれを話題にするのはコラム執筆者の腕の見せどころだ。 さて酔流亭がこの小説を読んだのは去年の今ごろである。例によって、新刊小説に感度のよいアンテナを張っている連れ合いに貸してもらった。 簡単な読後感めいたものを当時このブログに書いたから、貼っておきますね。 時代は1938~9年ごろ。NHK朝ドラ『あんぱん』のいま進行中の時代と同じである。題名にある<ふたり>とは、台湾に滞在中の日本人女性流行作家と台湾生まれの女性通訳のことだ。あとがきを読むと日本人作家は林芙美子がいくらかはモデルになっているという。林芙美子は1903年生まれだから、38~9年なら30代なかばということになるけれど、作中の感じではこの女性小説家・青山千鶴子はもう少し若い。まだ20代ではなかろうか。通訳の王千鶴はそれより数歳年下か。 この小説の優れた点は、植民地支配とは・植民地にされた側と宗主国との関係とはどういうものかが、軽妙な筆致を通じて、透けるように見えてくることだ。ネット上の書評にはそれが不快だという声もあるようだが。 先に触れた『あんぱん』では主人公の片割れ・のぶ(今田美桜)は女子師範を卒業して小学校教師となって子供たちへの愛国教育に打ち込む。しかし今週の放送では許婚者(いいなづけ)の戦死の報に打ちひしがれる妹(河合優実)の姿を見て、のぶの心には変化が起きつつあるようだ。来週からの展開に目が離せない。 国内では愛国や挙国一致が謳われている頃、日本の植民地とされた台湾や朝鮮では皇民化政策が強化され、日本の言葉や制度でその地の言葉や文化が強制的に塗り替えられようとしていた。台湾人や朝鮮人は日本人より<劣っている>とばかり、差別や侮辱をくわえることを通じて日本人に同化させようとしたのである。 青山千鶴子は、台湾に進駐している内地人(日本人)たちの夜郎自大には反発し、王千鶴に友情を寄せる。しかし彼女のいる位置も植民地支配の上に乗っかったものである。彼女が台湾に滞在して紀行を書き続けているのにも、人気作家としての発信力で大日本帝国の南方政策への支持を広げるという役割を持たせられている。 そのことに気づくまでは王千鶴と本当の友情を結ぶことはできない。そこに行き着くまでの青山千鶴子には、トランプの奇矯は嘲笑うけれどもアメリカによる国際秩序なるものは是とする、いわゆるリベラル派みたいなところがちょっとある。そんなことを考えさせられる点も面白かった。 (2025年5月24日更新記事から) 作者の楊双子氏は、もともと双子の姉妹であった。それに由来するペンネームである。姉妹のうち1人は2015年に亡くなったとのことだ。 国際ブッカー賞の受賞者は東アジアでは韓国のハン・ガンさんについで二人目だという。 一年前の新刊の帯には<全米図書賞受賞>とある。順調に行けば全米図書賞→国際ブッカー賞→ノーベル文学賞?
by suiryutei
| 2026-05-21 08:33
| 文学・書評
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