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新人事制度 大阪での報告①~③
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【いてんぜ通信】寄稿からの転写の3回目(最終回)です。 ここまでおつきあいくださり、ありがとうございます。 セロニアス・モンクという存在をこの番組によって教えられてから、それまでは木曜夕方の再放送時間にたまたま自室に居れば聴くだけであった〔ジャズ・トウナイト〕を、私はもう少し楽しみにするようになった。すると4月8日の再放送の前半はドリス・ディの特集である。 〔いてんぜ通信〕の読者は、私と同じく、もうけっこうな年配だと思うから、ドリス・ディ(1922-2019)といえば馴染みがあるのではないか。『ケ・セラ・セラ』始めヒット曲は多い。私も好きだ。曲目までは覚えていないが、聴いたことのある曲が次々流れる。番組MCの大友良英氏が、歌声の合間に感に堪えないように「ドリス・ディいいなあ」と言って、「アメリカはこんな素晴らしい音楽を作ってきたのに、いま何やっているんだ」と嘆息し、そのあと「今だけじゃないか」とつぶやいた。 この「今だけじゃない」が妙に耳に残ったのは、トランプがイランに向かって「石器時代に戻す」「一つの文明が滅ぶ」とかの脅しを繰り返していたときだからである。酷いことを言うものだが、アメリカ合州国は前からこういう言辞を撒き散らしてきた。「石器時代・・」も先例があって、カーチス・ルメイが前に言っている。 ルメイは第二次世界大戦末期、日本に対する都市無差別爆撃を指導した軍人である(1906-1990)。一晩で約10万人が死んだ1945年3月10日の東京大空襲のときは米空軍第21爆撃集団司令官だった。時代が下って、1965年ベトナム戦争において米軍が北爆を開始するとき、ベトナム北部を「石器時代に戻す」と嘯いたのである。 事実はベトナムは石器時代には戻らず、逆にアメリカが敗北して、10年後の1975年にベトナムから撤退した。しかし、この戦争でのベトナム人の死者は約300万人に上るという。アメリカ軍も約5万8000人が死んだ。こんにちのトランプの言動は常軌を逸しているが、アメリカ合州国は前からそういうことをやってきた。「今だけじゃない」のだ。 そうして、その戦争犯罪人カーチス・ルメイに戦後の日本は勲章を授与している。1964年、ときの政権は佐藤栄作で、勲一等旭日大綬章を与えた。航空自衛隊の育成・支援に対する功績というのが授賞理由である。アメリカと日本の歪んだ関係を象徴するエピソードではある。 2015年の「イラン核合意」の内容は「イランは、兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産せず(ウランの濃縮度は15年間にわたって平和利用に限られる3・67%までに抑えることが義務づけられた)、10トンあった貯蔵濃縮ウランを300㎏に削減する。また1万9000基あった遠心分離機を10年間は6104基に限定する。かりにイランが核開発を再開しても、核爆弾1発分の原料の生産に最低1年はかかるレベルに能力を制限する」というものだった。これでイランは核兵器製造からはるかに遠のいたが、この合意から一方的に離脱したのは第一次トランプ政権のときの米国である(2018年)。そんなことは棚に上げて、トランプはイランに核兵器製造の意図があると言い張り続け、とうとうこんにちの事態に立ち至った。 トランプの取り巻きどもの言辞も酷い。朝日新聞の中井大助記者(同紙アメリカ総局長)が4月21日朝刊に書くところによると、国防長官(戦争長官)ヘグセスは、イラン攻撃について記者会見で米国の武力の優位を嬉々として誇示し、「公平な戦いではない。倒れているところを殴っているのだ。そうであるべきように」と述べる一方、イランの学校にミサイルが撃ち込まれ175人もの児童が死んだのは米軍による可能性があることを問われても「調査する」の一言だけで、その後一か月以上、何の言及もないという。 つい最近目にした人類学者エマニュエル・トッド氏の言葉が頭をよぎる。引用中<彼>とはトランプを指すが、ヘグセスら取り巻きも同類である。 「・・彼は悪をなすのに喜びを抱くタイプの人間ではないかということです。嘘をつく快感、人を殺害させることにさえ快感を得ているのかもしれない。・・以前、放送番組の中で、細かな違いがあることは承知しつつ、外交についてのドナルド・トランプとヒトラーを比較したことがあります。外交以外も同じだと言っているわけではないのですが、ナチスの連中も、悪は善であり、善とは悪のことだと言っていたのです。これもまたニヒリズムの一つの形です。」(エマニュエル・トッド他著『2030 来たるべき世界』朝日新書2026年3月30日発行から)。 ヘグセスといえば、小泉進次郎防衛相と会談するたび、2人はいかにも意気投合したような演出がされる。トランプに抱き着く高市早苗首相といい、日本の政治指導者たちは、ゴロツキのごときアメリカと、どうしてこうもベッタリなのか。もっと問題なのは、こんな高市や小泉に、日本の有権者が高い支持を与えていることだ。どうしてなのか。 『普天を我が手に』と題する長編小説がある。奥田英朗著、講談社。三部作が去年立て続けに刊行された。男女4人の主人公はいずれも1926年つまり<昭和>の始まった年に生まれるという建て付けはなかなか面白いのだが、戦争をくぐり抜けた主人公たちの戦争への思いは、隣国を侵略して酷いことをしたことより、米国のような強い国と戦ってしまったことに対する<反省>に帰着する。だからこの先は、米国にだけは逆らわず、ついていかなければ。戦後日本の平和主義の内実は結局そのあたりに落ちぶれてしまったか。 ・・・ここまで書いてきたところで筆が止まってしまった。地団太を踏むばかりで文章を終わらせたくはないのに、現実はにっちもさっちも動かないように見えるからである。3日も4日も何も書けず足踏みしているうち、大型連休つまりこの稿の締め切り(4月いっぱい)が迫ってくる。しかし、私は書くことから逃げて、パーシヴァル・エヴェレットのもう一つの新刊『赤く染まる木々』を読みふけった。1月に出た『消失』よりわずかに早く、去年12月に早川書房から出版されている(訳・上野元美)。私が読み始めたのは4月下旬からだ。 ![]() 小説の題名から、ジャズに詳しい人ならビリー・ホリディの歌唱で有名な『奇妙な果実』を思うかもしれない。それはリンチされた黒人が木に首を吊るされている図だ。はたして、小説には黒人女性がその歌を歌う場面があり、歌詞も挿入されている。
南部の木々は奇妙な実をつける 葉についた血と根元に落ちた血 黒いむくろが南部の風で揺れる ポプラの木にぶらさがる奇妙な果実 (以下略)
合州国南部ミシシッピ州の田舎町で奇怪な殺人事件が続くのである。被害者は白人で、しかし、その傍には加害者らしき黒人男性の死体もある。州捜査局から派遣された2人の黒人刑事は息の合ったコンビだし、FBIからも派遣された女性黒人捜査官は頭が切れる。上質のハリウッド映画のような滑り出しだ。そういえば、かつてシドニー・ポワチエが主演した『夜の大捜査線』(ノーマン・ジェイスン監督、1967年)も、ミシシッピ州で起きた殺人事件の捜査にあたる黒人刑事の物語であった。 『夜の大捜査線』のラストでは、地元の、初め人種的偏見を持っていた警察署長(ロッド・スタイガー演)と主人公は和解する。しかし『赤く染まる木々』では推理作品としての枠組みは次第にかなぐり捨てられ、人種戦争の様相を呈していく。この小説は、トランプに代表される合州国支配層に、またトランプだけじゃない、合州国の差別と暴力の歴史に対する告発の書なのだ。 梃子でも動きそうもない現実に、それでも穴を開けるために、パーシヴァル・エヴェレットの文学的営為に励まされる。 (了) ストレート・ノー・チェイサー ~【いてんぜ通信】26夏号寄稿(前) : 酔流亭日乗 P・エヴェレット『消失』をめぐって ~【いてんぜ通信】寄稿『ストレート・ノー・チェイサー』(中) : 酔流亭日乗 ![]()
by suiryutei
| 2026-06-01 04:34
| 文学・書評
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