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今週水曜日(10日)に観てきた映画『オールド・オーク』は、巨匠ケン・ローチのもしかしたら最後の作かと話題になっているから、ネット上でも感想記事がいくつも載っている。そのうちの一つ、読売新聞の映評を貼り付けておこう。商業新聞のデジタル記事としては珍しく、会員限定(有料)ではなく全文を読めるし、内容も作品の紹介として、また映評として、過不足ない。 そんなわけで、作品の紹介は上の読売デジタル記事に任せるとして、酔流亭が映画の中で気にかかったのは、酒場〔オールド・オーク〕に入り浸る常連客たちのことだ。 それは酔流亭が、あの彼らと同世代で、やはり酒好きだからでもある。 しかし、もう一つの理由は、彼らがかつて労働者だったからだ。年齢からして、また明るいうちから酒場にたむろしているのだから、今や退職者である。その点も酔流亭と同じだ。 彼らが働いていたイギリスの炭鉱では、効率化を追求して、また強力だった労働運動を叩き潰そうともして、廃坑が提案される。1980年代なかばのことである。労働組合はストライキをもって果敢に闘ったけれども、当時のマーガレット・サッチャー政権は強硬姿勢を貫き、ストライキは敗北を喫する。 同じころ日本でも国鉄の民営化が断行され、強力だった国鉄の労働組合は大きく力を殺がれた。酔流亭が働いていた郵便事業では、その数年前の1970年代末、労働組合敵視の労務政策に抗って反マル生越年闘争と呼ばれるものが闘われたけれども、これも多くの解雇者を出して敗北している(懲戒免職58名)。 (これは朝日新聞5/1夕刊に載った映評) さて映画の舞台であるイギリス北東部の旧炭鉱町では、炭鉱が無くなり、さびれていく街に、故国での戦火を逃れてやってきた移民たちが増えていく。〔オールド・オーク〕の常連たちは、それを自分たちの居場所がよそ者に奪われると感じるのである。 イギリスの旧炭鉱町だけでなく、世界のどこでも見られる光景だろう。かつての工業先進国では、いまやたいてい製造業が不振だから、基幹産業にいた労働者階級も精彩がない。自分たちが精彩を欠く、その不満のはけ口が、増えつつある移民に向けられる。第三次産業(サービス業など)に職を得ることが多い移民労働者は世の中になくてはならない存在になっているというのに。 こうした分断を乗り越えるためにまずやらなければならないのは、出会いの場を作ることだ。映画の主人公TJ(〔オールド・オーク〕のあるじ。常連客とは同世代)はそう考えて、シリアからの移民である若い女性ヤラたちと協力して、移民と地元民が顔を合わせる食事会を行う。ところが、彼らの協働が深まるほど、それを妬んでヘイトを鋭くしていく者がいる。同時に、それはまずいと、立ち止まる者も出てくる。同じ境遇にある者が、右にも左にも行きうる。 右にも左にも行きうる人たちを、あっちに追いやるのではなく、こっちに引き戻すには、どうしたらいいか。 食事会くらいでどうにかなるものかよ、と言うなかれ。そういう取り組みを続ける人がいることが大事なのだ。失敗し、妨害されても諦めない。その先に映画は希望をつないでいるように思う。 ※ケン・ローチ監督の旧作『わたしは、ダニエル・ブレイク』について、9年前にこんな記事を書いていた。貼り付けます。
by suiryutei
| 2026-06-13 04:56
| 映画・TV
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