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今年4月に出た本だが、収められている文章は2023年から25年にかけてのもの。1934年生まれの作者にとって90歳前後の文章だ。「老耄・・日記」とサブタイトルにある所以である。 その年齢になっても大変な健啖ぶりで、銀座〔久兵衛〕(超高級寿司屋です)とかホテル・ニューオータニ内のレストランとか、こちらなどはとても足が向かない高級店を食べ歩く。 まあ、勝手にやってくださいというところだけれども、そんな暴美食?日記の合間にまともな文章も挟まっていて、たとえば一昨年の夏ガルシア・マルケスの『百年の孤独』が文庫化されたとき、その文庫版(新潮文庫)の解説を書いたのは筒井康隆。その解説全文も収録されている。 それによれば、筒井は『百年の孤独』の魁偉を認めた上で、より好むのは同じ作者の『族長の秋』だという。 「文学的には本書(『百年の孤独』=引用者)の方が芸術性は高いのかもしれないが、その破茶滅茶度においてはこちら(『族長の秋』=同)が上回っている」(155ページ)。 酔流亭は『族長の秋』は未読で、いずれは読みたいと思っていたのだが、『百年の孤独』よりハチャメチャならば、恐ろしくてちょっと手が出ないね。 津村喜久子の『水車小屋のネネ』が第59回谷崎潤一郎賞を受賞したとき(2023年)の選評も載っている。筒井はこの賞の選考委員なのである。 「心憎いばかりに読者を感情移入させる傑作。最後はネネやりっちゃんと別れるのがつらかった。」 酔流亭も同じように思った。美食や贅沢のかぎりを尽くしても、この老大家の感受性はまだ瑞々しい。 ※一年前、ハン・ガンの文学についてノートをつけたとき、対象(ハン・ガン文学)に接近していくための足掛かりとして酔流亭は『百年の孤独』と『水車小屋のネネ』に言及していたのだった(〔いてんぜ通信〕第19号)。老大家との偶然の一致?に喜ぶ。
by suiryutei
| 2026-07-03 09:06
| 文学・書評
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