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小説家の丸谷才一さんが朝日の朝刊に月に一度、随筆を書いている(『袖のボタン』)。酔流亭はこれを読むのがたのしみ。で、昨日載ったのは『守るも攻むるも』と題したものだった。 まず、日本海軍は自ら爆沈した軍艦が多い、という話から筆を起こす。五隻もあって、これは世界有数なんだそうだ。そのうち明治38年の戦艦三笠は、日本海海戦の勝利に浮かれた水兵たちが火薬庫のなかで宴会をやったせい(! あな恐ろしや)だという。その年は西暦で1905年、日露戦争があった年である。 あとの4隻の原因は明らかではない。しかし、精神科医の中井久夫氏に、こういう記述がある。 「日本の艦はよく爆沈するが、少なくとも半数は制裁のひどさに対する水兵の道連れ自殺という噂が絶えない」(『関与と観察』みすず書房)。 ついで、今日の自衛隊のことに丸谷さんの筆はすすむ。 一昨年から昨年にかけて、海上自衛艦「たちかぜ」の二等海曹・某(34歳)の裁判があった。彼は、ささいな理由で後輩にエアガンを発射して暴行したり、後輩隊員たちに強制してエアガンとガス銃を用いたサバイバル・ゲームを艦内でやらせたりしていた。この男による虐めを絶対に許せないと遺書に書いて自殺した隊員もいる。判決は懲役2年6月、執行猶予4年。防衛庁は終始、この事件の解明に消極的だった。 しかも、これが氷山の一角に過ぎないらしいことを示すのは、自衛隊員の自殺者数である。04年度で94人(その前年は75人)。 自衛隊員の総数は何人だろう。今、ちょっと調べる時間が無いのだけれど、去年の総選挙で小泉総理は「郵便局員は警察官より人員が多い(だから民営化して減らしてしまえ)」と演説してまわった。その郵便局員は全国で正規職員が26万人くらいである。警官はそれより少ないとなると、自衛官はその警官より、もっと少ないだろうから、つまり、今のところはたいした数ではない(郵便局員と比較して、ですよ。軍備を持っていないはずの国としては、多すぎると思うが)。その人数で一年間に100人近く自殺するというのは、やはり異常な数字ではあるまいか。自衛隊というのは、身体頑健な若者が志願して集まってくるところである。給与も悪くないらしい。とすると、病気や高齢や貧困を苦にして、という巷に多い自殺理由はあまり考えられぬ。丸谷さんが推測するとおり、陰湿ないじめやリンチが体内で横行していることが、背景としては大きいのではないか。 そこで、丸谷さんはこう指摘して昨日の随筆をしめくくっている。 「われわれの文明のこういう局面はまことに不快なもので、心を暗くするに充分である。どうやら近代日本人は軍隊という厄介な組織を持つのに向いていないらしい。近頃は改憲とか再軍備とかを主張する論者が多いけれど、その種の議論をする際、このような国民全体の幼さを考慮に入れる視点も必要だろう」。 賛成です。パチパチパチと拍手を贈りたい。
by suiryutei
| 2006-02-08 10:14
| 文学・書評
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Comments(5)
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waku59 at 2006-02-08 20:25
丸谷才一のダンディズムがおいらは好きです。
旧仮名遣いを始めた頃からなじめなくなり 読まなくなりましたが(『袖のボタン』は読んでます) 『年の残り』を最初に読んだ時は目からうろこでした・・・。 なるほど小説とはこういうものか! ・・・と。
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suiryutei at 2006-02-08 22:53
wakuさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
丸谷才一の小説はほとんど読んでいないのですが、中学くらいの国語教科書によく載っているドーデの『最後の授業』という短編小説について彼が書いていることに「なるほど」と思ったことがあります。 「・・・だが、他国語をおとしめることによって自国語を顕彰するといふ態度は、根本的に間違っていると思ふ。自国語への愛情とは、他国語への軽蔑や憎しみによって高まるやうな仕掛けのものではなかろう」(一部、旧仮名遣いで引用)。 今日あらためてかみしめたい言葉だと思います。
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suiryutei at 2006-02-08 23:33
『最後の授業』は中学ではなく小学校の国語教科書だったかしら。
話題の『博士の愛した数式』(小川洋子 著)を一昨日から読み始めたのだけれど、算数なんか小学校で教わったことも忘れている。いや忘れたというより、その後の人生で使ってこなかったんですね。
日本の場合、元々差別するものが無いから、どうも陰湿な事になるんでしょうね。学生の部活でも、時々事件になるのも、似通ったところがあるかも知れませんね。
だけど、先日、スタンドアップという映画見て、すさまじい女性差別に、 びっくりしました。実話の映画化なんですけど、炭鉱で働く女性のセクハラの物語です。アメリカの人種差別と、男女偏見は、僕らの想像を超えるかもしれないです。 ただ、日本のそんな陰湿ないじめやら、暴力は、僕らの想像をはるかに 同じように超えているかもしれません。 隔離された枠では、全く違う文化が間違ってつくられるようで、 それが普通になって、全体が麻痺してしまうんでしょうね。
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suiryutei at 2006-02-09 22:57
夢八さん、こんばんは。
『スタンドアップ』という映画はかなり評判になっているようですね。 私の職場なんかは、男ばかりだし、単純肉体労働の現場なので、むかしの軍隊って、こうだったのかなあ、と感じるようなところもいくらかあります。つまり、管理者(上官)には決して反抗しないくせに、おとなしい相手はいじめるという奴がいる。軍隊では、こういうことが増幅されるのだろうなあ。
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