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小森陽一『村上春樹論』(平凡社新書)を読み終えた。そして頭をかかえてしまった。この本は「『海辺のカフカ』を精読する」と副題がついている。あの小説なら酔流亭は先月読んだばかりだ。しかし、小森氏のような読み方はしなかったのである。むしろ漫然と読んでしまったところがある。小森さんは「精読」だ。 そして精読すれば、たしかに指摘されてているような点が浮かび上がってくるのかもしれない。9.11以降の世界の暴力性や、戦後の日本人が従軍慰安婦のことなど戦後責任の問題に向き合ってこなかったことを、あの小説は受け入れ、肯定していると小森さんは糾弾する。 酔流亭は村上春樹の愛読者ではない。ごく最近になってから数冊の本を読んだだけだ。ただ、たとえば『世界の終わりとハードボイルド・アンダーランド』に、主人公の影が主人公に向かって「物事は一番弱いものの立場から見なければだめだ」と語る場面がある。その視線には好意を持った。村上の文章を読んでいると、なんとなく居心地が良いのは、そういうところがあるからだろう。しかし『海辺のカフカ』では、カフカ少年はタフであること・強くなることをを求められている。そのあたりは、変ってきたなあという感じはした。 世の中のこととは関わらないようでいて、村上の作品世界には世情が敏感に反映するようである。その感受性の高さは彼の優れた資質だと思う。しかし、それが受動性と結びつくとき、現状に対して肯定的となるかもしれない。言葉を操って現実と対峙していくようなタイプでは彼はないのだ。『ノルウェイの森』の主人公であったか、何が起きても「やれやれ」という言葉を口ぐせにしていたのは。 その受動性は作者自身の姿勢の投影だろうが、そんなふうにあらゆることを受け入れていっていいのかと小森さんは説いているようだ。 『海辺のカフカ』は図書館から借りて読んだので、いま手元にない。村上春樹の作品をもうすこし丁寧に読んだ上で、改めて考えてみたい。
by suiryutei
| 2006-08-28 18:22
| 文学・書評
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Comments(16)
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不手際ついでに。
小説を精読して作者を糾弾?え?なぜ?なぜ? 未読ですが、読んでみようかしら。
0
状況に対する小森氏の問題意識には共感するのですが、個々の論の進め方にはちょっと強引なところがあるように思いました。小説のほうをこちらも精読してみないと、なんとも判断できないのですが。
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村上作品は、彼のデビュー以来リアルタイムで愛読してましたが、
それでかな・・・「カフカ」からは「もういいや」と。 まったくピンとは来ませんでした。 やっぱり初期の3部作が私は好きですね。 面白いのは、 当初は社会から瀬を向けていたと思われる「ハルキ」が 「アンダーグラウンド」から社会性を帯び、 当初から社会とガチンコしてきた「リュウ」が だんだん現実から離れていっているような・・・。 何を象徴しているんでしようね。この変化は。 ![]()
酔流亭さまのお座敷で、聞き耳頭巾。
風屋さん、リアルタイム愛読者ですかぁ。で、もういいやですか! そっちのほうが興味深い変化かもしれない・・・。 村上春樹の読み方はさまざまに可能だと思いますが、社会との対峙という視点だけにこりかたまっては、小説の醍醐味が・・・と、わたしなどは思っています。 欠落や歪つさをかかえた心の旅が描かれてきた、と言えそうですが、本音を言えば、いつまでもコドモッぽいし、悪が足りない気がしています。また、神話、象徴、・・・精読にも、いろいろなキーがありそうですね。
風屋さん、こんばんは。
しかし村上春樹は読まれていますねぇ。改めてそう思いました。 村上龍は「だんだん現実から離れていっている・・」。 そうなんだ。私は同世代(二人の村上はすこし上ですが)の小説家のことに疎くて・・・(他のことにも疎いですが)。皆さんのコメントに教えられます。
のね子さん、こんばんは。
うん、読み方はさまざまに可能ですね。 村上春樹の愛読者の友人がいるのですが、この人は文芸批評家としての小森陽一も信頼している。それで今回の小森氏による春樹批判には考えさせられるところがあったようです。 ![]()
のね子さん、おはようございます。
ぐっすり眠れましたか。目覚めれば、空はかすかに秋の色・・・。 ![]()
酔流亭さま、おやすみなさい、・・・・て、もう夜だわん。
小森さんの新書、一応読みましたよ。 問題意識への共感と論の強引さへの疑問符、という酔流亭さまのコメントに、とりあえず頷きました。 私が気になった点、いくつか。 ①言葉を操る生きものたる人間、という端正な人間定義に疑問符。 ②作家に過剰に期待し、転向とみるや批判、なんて、そもそも成立する営為なのだろうか、という疑問符。 ③癒されたい我々のリアルタイムのきつさ。記憶消去自己正当化前進の上に成立してきた戦後社会の先をゆく若い世代が、前世代が負うべき死者まで背負えるか。リセットの欲望の巨大さを、こうした論調で論破可能か。 あらためて小説とつき合わせてみないと深いことは言えないし、従軍慰安婦問題に触れられている部分はなかなかセンシティブですが・・・。 ではでは
のね子さん、おはようございます。
たちどころに一冊を読み終え、しかも的確な指摘、感服しました。 リセットの欲望の巨大さ。うーん、そうなんだよなあ。 私はあの本の後、高橋哲哉氏の『戦後責任論』を読み直してみました。 高橋さんにも小森さんにも共感するし、その論理はじつにシャープです。でも、ちょっと書生っぽいかなあ、という感じもします。いや論理を軽んじる我らが社会では、この書生っぽさこそは貴重だと思うし、私自身も書生っぽく生きたいと念じているんですが。 ただ、「こうした論調で論破可能か」というところは、私もすこし感じました。 ![]()
おはようございます。
この頃何読んでも、「まとめ方はうまいなぁ、でも驚くほどのこと言ってないじゃん、甘いというか鈍いというか・・・いまさらこんなこと説くの、天下のインテリが?」と感じてしまいがちで、自分がどうもバーチャル(バーチャンじゃなくてよ!)老書生脳と化していて、かえって思考停止安住タイプの盲点にはまってんじゃないかしら?などと危惧しています。 酔流亭さまは書生っぽく生きたいんですか?そっかぁ・・・。私は自分のそこがむしろコンプレックスに近いんですが・・・。
のね子さん、こんばんは。
もともと乏しい思考力が、日々さらにすり減らされていくような労働環境にかなり深刻な危機感を持っています。それで書生っぽくありたいなどと思うのですが、まあ、いい齢をして何を・・・というところです。 ![]()
酔流亭さま、おつかれさま。
夜勤がきついのでは・・・。心配です。 いい齢をしては禁句、禁句。みんな、「いまが一番若い」、のですから。 さっきは風の兄貴のところにいらしたでしょう?いつかハ○マ○さんと酔兄ぃと、そんでもってのね子もいれてもらって、花巻に神楽見にゆくツアー、企画してくださいね♪ ご無理なさらず酔流亭さまらしいブログで今後とも勉強させてください。
のね子さん、こんばんは。
心配してくださって、ありがとう。そうですね、みんな「今が一番若い」んです。すこし愚痴ってしまったな。ごめんなさい。 その企画、いいですね。髭彦さん達にも呼びかけて大ツアーをやりましょうか。花巻では風の兄貴に仕切ってもらって「わんこ蕎麦」大会!
はじめまして~、eagleiと申します。
ヘンリーさんのところから飛んできました。 突然に失礼します。 僕も、「海辺のカフカ」を読みました。 前に一度感想を記事に書きました。 でも、もっと書きたいことがあって、いつかまた書こうと思っています。 一緒に語れたら嬉しいです。
eagleiさん、初めまして。
よくぞいらしてくださいました。敬愛するhenryさんのところからとは、いよいよもって嬉しいです。 『海辺のカフカ』、ちょうど再読したところです。小森陽一さんは誤解されているところがあるなあと思うのですが、再読してみて、なぜ誤解したかがおぼろげにわかったような気がします。そのあたり、改めて考えてみたいといま思っているところです。
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