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■2003/12/23 (火) 18:45:26 マルスの歌 昨日の『朝日歌壇』で馬場あき子さんが選んだ10首の中にこんな短歌があった。投歌されたのは山形県の男性である。 ひと夏の蕎麦畑守る老を見て宇宙の奥に火星はさかる 6万年ぶりという火星の地球接近が今年は話題になった。9月に茨城県の金砂郷に蕎麦を食べに行ったことを想い出す。帰り、利根川に架かる橋を車で渡るとき日がとっぷりと暮れて東の空に満月に近い月が浮かんだ。十三夜だった。月の近くにちかちか瞬く星があった。これが火星で、その頃が地球に一番接近していた時期だった。 火星(マルス)は西洋では軍神。いくさを司る神ということになっている。この軍神がちらちらした一年でもあった。日本が中国大陸での軍事行動を拡大させつつあった1938年、石川淳は小説『マルスの歌』を書いて軍事にのめり込んでいく社会の風潮を鋭く批判した。加藤周一『日本文学史序説』によれば「これは日本の小説家が日中戦争について書いたもっとも鋭く、もっとも正確な文章であったろう」。 「征服者が押し付ける『平和的な』笑顔、被征服者の立場と心理に対する征服者の側の無知、その無知が相手の表情のNO! を読めぬところまで徹底している社会とその指導者・・・」。30年以上前に『マルスの歌』について書かれた加藤のこの文章は今のイラクを巡るアメリカや日本にそのまま当てはまるのではないか。 今年はまた映画監督・小津安二郎の生誕100年でもあった。小津と石川淳とはほぼ同世代である。小津の後輩の映画監督・吉田喜重によれば、小津は自分の映画の中に軍服姿はけっして登場させなかったという。 これを反戦とか抵抗と言えばすこし違うだろう。小津にそういう言葉は似つかわしくない。しかし、こういう形での「拒否」もあるのだな。
by suiryutei
| 2003-12-23 11:50
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